重く閉ざされていたドア ページ3
．
｢お前、誰に向かって口聞いてんだ！？｣
｢ちょっとAを離して！！｣
｢自業自得でしょ！｣
仲間のふたりが男の手を私から離そうとするが
弱っていた私達が大人の男に到底勝てるはずない。
それに口の中は切れて血の味がする。
そうだ、おかしいよね
商品であるアイドルの顔を殴ることも
誰もいない部屋で何時間も踊らされることも
栄養失調寸前になる食事も、お湯が出ないシャワーも
明かりのない部屋も一向に見えないデビューも
初めっから全てがおかしかったのだ。
．
｢死んじゃう！！｣
｢お願い！離して！｣
首を絞められているのだろうか
もう頭に酸素が上手く回らずよく分からない。
なんのために頑張っていたのだろうか
もうダメかも……
仲間の声が遠くなった時、
重く閉ざされていたドアから光が見えた。
．
｢そこまでだ！！その子を離せ！！｣
誰かの声が聞こえ、
首にあった手がパッと離れその場に崩れ落ちる。
朦朧としていた意識が取り戻されるような感覚に
耐えること数秒後、視界がハッキリしてきた。
目の前で泣いている仲間が2人と
クズ男に飛びついている別の男の人が2人と
私の方へ歩いてくる男の人が1人
｢君たち2人は、親御さんが下で待ってるから行きなさい｣
｢……っありがとうございます｣
｢Aをお願いします｣
彼女達はこの場を一刻も離れたかったのだろう。
私を心配しながらも、ドアの方へ走って行ってしまった。
これが会うのが最後だと言うのに
練習してきた時間はほんとに無意味になってしまう。
．
｢……ケンチャナ？｣
『……っ』
怖い。
長い時間私を支配した恐怖が私にまとわりつく。
｢私は何もしない。君を助けに来た｣
『だ、誰なんですか？』
｢……私は｣
男の人の胸ポケットからでてきた紙を
私は受け取ることが出来なかったが
男の人はそれを怒らずゆっくりと床に置いた。
．
．
｢プレディスの社長、ハンソンスだ｣
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作者名：コンジョン
| 作成日時：2023年2月8日 20時
