第56話 彼女の仮面事情 ページ10
.
Aの愛梟であるノクトはフクロウの身でありながら大変な面食いである。元よりキラキラとしたものを好んでいた彼にとって、造形の美しいものは等しく好きだった。
そしてそれは、主人となる者も例外ではなかった。自分に飼われてからのノクトしか知らないAは、彼が自分の主人になろうとした人たちに対してどんなに気難しかったか知らないのだ。
杖は持ち主を選ぶというのは有名な話だが、このフクロウもまた主人を選んだ。こんなに美しいフクロウが、新入生であったAと出会うまで売れ残っていたのは、そんなわけである。
だから、そんなノクトを一番最初に射止めたAの容姿については、もはや言うまでもないだろう。
と言っても、この話は件のフクロウ殿以外は知る由もない話である。
−−−−
思っていたよりも挨拶をしなければならない相手が多く、Aの事を長い時間一人にしてしまった。
一人で僅かな物音も立てずに部屋を出て行ってしまった後輩の背中をただ見ている事しかできない。
Aを一人にしてしまうのは不味かったかもしれない。せっかく楽しみにしてくれていたのに。
視界の隅でドリンクを片手に若い女性と談笑しているあの男は、先程からAに声をかけようとしていた。
実際彼女はとても綺麗だった。いつも化粧っ気のない顔を見ていたからか、飾り立てられた彼女を目にした時あまりの美しさに思わず見入ってしまった。よくみれば彼女は自分が贈ったネックレスをちゃんとつけてくれていたのだがその時は余裕がなかった。
そんな彼女は入室してからずっと周りの視線を集めていた。
Aに挨拶されておらず、かつAを知らなかった所を見るに、あの男はきっと家系図で見ればかなり端のほうにいるのだろう。
Aの実家であるA家は、知名度はそこまでないものの、裏の実力者というか、歴史も深い、知る人ぞ知る名家なのだ。
考えてみれば、Aが出ていって良かったのかもしれない。もし男が声をかけていれば確実にこの場の空気が固まり周りから寒気がするようなオーラがするに違いない。もちろん男に向けられたものである。それにAも困ることだろう。
そうなれば確実に事が大きくなるだろう。
それは避けたい。あまり大事にはしたくないのだ。
数分もしたらAを探しに行こうと決めて、目の前の愛しい許嫁であるナルシッサからどうやって解放してもらおうか考えた。
.
第57話 甘いと思うか今年の冬よ→←第55話 壁花、欠いてシャンパン
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 484人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハリーポッター」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
亜京目(プロフ) - 有難うございます！ストレートな褒め言葉に顔のニヤケが収まりません…これからもよろしくお願いします。 (2018年12月4日 20時) (
レス) id: 7f37cdc276 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ(プロフ) - こんにちは、初コメ失礼致します。物語の設定とか描写の仕方がドストライク過ぎてとても好きです(^^) これからも更新楽しみにしてます。体調など崩されぬようご自愛くださいませ。 (2018年12月2日 14時) (レス) id: 1a92e170c3 (このIDを非表示/違反報告)
亜京目(プロフ) - 雨さん» コメント有難うございます。最近の話の流れが難しく、四苦八苦しながら更新している状態です。ですが必ずまとめてみせます。これからもこの作品をよろしくお願いします。 (2018年9月22日 16時) (レス) id: 7f37cdc276 (このIDを非表示/違反報告)
雨(プロフ) - 頑張ってください！更新楽しみにしてます！ (2018年9月17日 21時) (レス) id: cd068f5c5f (このIDを非表示/違反報告)
亜京目(プロフ) - fairy taleさん» 暖かいお言葉をありがとうございます。自分の好きなように書いている物を読んで頂いていること、誠に感謝しております。これからもどうぞご愛読の方よろしくお願い致します。 (2018年8月29日 20時) (レス) id: 7f37cdc276 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：亜京目 | 作成日時：2018年8月17日 22時
