第75話 夢想を語る物知らず ページ29
.
「この子はこうして倒れることがよくあるんです。その…貧血で虚弱体質なのよ。貴方が見つけてくれて良かったわ」
ルーピンの身体状態を簡単に確認した後、手際よく治療の準備をするマダムの言葉に一つ納得した。
流石に同年といっても性別の違いはある。男子生徒１人を背負って保健室まで行くのは少々きついかもしれない。そう思ったのに、ルーピンの体は異常な程に軽かった。背中に僅かに当たるあばら骨や、骨張った腕からして彼は標準よりかなりの痩せ型のようだ。
こいつ、ちゃんと食べてるのか…？
と、己の立場を忘れて純粋に心配してしまうほど、彼の体は不健康極まりない状態だった。
あとはマダムに任せようと、カーテンを閉めて立ち去ろうとすると、マダムに引き止められた。
そして水が張られた洗面器と手拭いを渡され、自分が薬を用意している間ルーピンの様子を見ているよう言い付けられた。
「なんで私が……」
そうは言っても、私はマダムに恩があった。恩という言い方は私が大層な存在に聞こえるのであまり使いたくないのだが、ほかに言い方が見つからない。セブルス君と私は、悪戯仕掛け人の一番の獲物であるが故に、保健室の常連になっていた。その度にマダムには世話を焼かれているので頭が上がらないのである。
「その…Aはポンフリーと仲が良いんだね」
「…君たちのお陰だよ」
穏やかな言い草に引っかかりを感じて皮肉を言えば、彼は気まずそうに再び顔を引きつらせた。
「あ…、そうだよね…」
そうだよね、とは。
彼は本当に分かっているのだろうか。自分たちが起こしている騒動の数々を。私達にしている行いの容赦の無さを。
私は先程彼を背負っている時に言われた事を思い返した。
自寮が何だの悪い奴らではないだの、何故それをよりにもよって私に言うのだ。
たかが自分の言葉くらいで私が印象を変えるとでも思ったのだろうか。いや、思っているならあの様に自信なさげに言うこともないだろう。
随分と擁護する言葉ばかり吐くものだとその時は嫌悪すら感じていたが、今考えてみれば、あの言葉は自分の仲間達を庇っているように見えて、実際は自分自身を守っていたのではないか。
そうだとしたら納得がいく。なるほど、道理で心に響かないわけだ。
「さっき貴方は自分たちがさも良い人柄をしているかのように言ったけれど、なら私がスリザリンは気のいい奴らばかりだと言えば、貴方は信じるのか」
「え…」
.
第76話 哀れみに相違あらぬことを→←第74話 真意の探り合いもなし
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 484人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハリーポッター」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
亜京目(プロフ) - 有難うございます！ストレートな褒め言葉に顔のニヤケが収まりません…これからもよろしくお願いします。 (2018年12月4日 20時) (
レス) id: 7f37cdc276 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ(プロフ) - こんにちは、初コメ失礼致します。物語の設定とか描写の仕方がドストライク過ぎてとても好きです(^^) これからも更新楽しみにしてます。体調など崩されぬようご自愛くださいませ。 (2018年12月2日 14時) (レス) id: 1a92e170c3 (このIDを非表示/違反報告)
亜京目(プロフ) - 雨さん» コメント有難うございます。最近の話の流れが難しく、四苦八苦しながら更新している状態です。ですが必ずまとめてみせます。これからもこの作品をよろしくお願いします。 (2018年9月22日 16時) (レス) id: 7f37cdc276 (このIDを非表示/違反報告)
雨(プロフ) - 頑張ってください！更新楽しみにしてます！ (2018年9月17日 21時) (レス) id: cd068f5c5f (このIDを非表示/違反報告)
亜京目(プロフ) - fairy taleさん» 暖かいお言葉をありがとうございます。自分の好きなように書いている物を読んで頂いていること、誠に感謝しております。これからもどうぞご愛読の方よろしくお願い致します。 (2018年8月29日 20時) (レス) id: 7f37cdc276 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：亜京目 | 作成日時：2018年8月17日 22時
