4話 英雄さんと私情 ページ5
英雄さんが帰ってきて3日経った。英雄さんはよほど疲れていたらしく、帰ってきた次の日はお昼まで眠っていた。そろそろ疲れも取れてきただろうし、いろいろ聞いてみようかな。
『ねぇ、英雄さん。管理AIの尋問って具体的にはどんなことをしたの?』
「ん?まぁ...AIに備わってる機能とかを1つずつ破壊していっただけだ。そんな難しいこととかは何もしてないよ。」
『へぇ...そうなんだ。英雄さんはさ、仕事には私情を挟まないって言ってたよね?今回の尋問ではどうだった?あのAIって好きで人間を殺してたわけじゃないんでしょ?情が湧いたりはしなかったの?』
「....お前はどう思う?」
『私は、情が湧いたんじゃないかなぁって思ったよ。優しい英雄さんのことだからね。AIの過去とかを知ったらなおのことね。どうかな、当たってたりする?私は英雄さんの感情や意思を尊重するよ。だから、何でも話してほしいな。』
「....はぁ、なんか見透かされた気分だ。そうだな。俺はあのAIに情が湧いた。あいつの過去を知っていくたびに胸が苦しくなった。.....なぁ、A。話を聞いてくれるか...。受け入れてくれるか...。」
『うん。何でも聞くし、もちろんどんな内容でも受け入れるよ。』
「...ありがとう。...実は、あのAI、逃がしたんだ。とどめを刺す前に。どうしても殺したくなかったんだ。俺は仕事に私情を挟んじまった。このことがブカ達に知られれば、俺は間違いなく処分されるだろう。レジスタンスのリーダーが管理AIに絆されたってね。俺はリーダー失格だ。称賛されるべき人間じゃないんだ....!」
『....そっか。逃がしたんだね。まぁ、いいんじゃない?多分私もそうしたと思うよ。それに英雄さんは称賛されるべき人だよ。だってこんなに頑張ってるじゃない。...ねぇ、英雄さん。私があなたのことを英雄さんって呼ぶのはなんでだと思う?』
「...俺はてっきり、イジられてるのかと思ってたぞ。」
『ははっ!まぁそれもあるけど、1番の理由はね、私にとってあなたは英雄だからだよ。』
「は?どういうことだ?」
『あなたは私にいろんなものをくれた。いろんな感情を教えてもらった。あなたに命をもらった。あなたが私を拾ってくれたあの日から、あなたは私の英雄だよ。だから、せめて私の前では素のあなたでいてほしい。私はあなたを支えたい。だから今日、英雄さんの話を聞けて良かった。』
「ふぅううっ...ありがとう...!」
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作者名:きなこもち | 作成日時:2023年12月31日 15時