私は英雄の家に居候しています。 (ページ24)

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23話ページ24

「本当にすげえよ。いつの間にか演奏に引き込まれてた。」

「音に多くの感情が乗せられていて、Aさんの、演奏する中で描く景色が想像できました。豊かな表現力ですね。素晴らしいです。」

『ふふ、ありがとう。二人の前だから緊張したけど、満足のいく演奏ができたよ。…さて、次は歌だね。』

「ええ、楽しみです。」

『ふふ、うん。』

私は二人の前に立つ。

『…』

目を閉じて集中する。どんな景色を描きたいのかをイメージする。

『…すぅ、〜〜♩♪♫』

歌詞に込められた意味を、想いを、音に乗せる。声に乗せる。景色を描いていく。二人に伝わるように、引き込むように歌う。

歌い終わると、二人は涙を流していた。

『えっ、大丈夫？』

「…とても素晴らしいです。音に、声に感情が乗っていると感じました。涙が流れる理由は自分でもよく分かりませんが心に響いた、ということなんでしょうね。…とても感動しました。」

「…ぐすっ、何かAを拾った時のことを思い出した。お前の歌う声が、何だか、切なく感じた。お前がイメージする、この曲の世界観や景色に引き込まれた。…お前、どれだけ才能を持ってるんだよ。」

『ふふ、ありがとう、二人共。とても嬉しい。まさか、二人がここまで感動してくれるとは思ってなかったよ。』

「いや、感動するだろ。こんなすごいの見せられたら。」

「Aさんは、音楽の才能もお持ちなんですね。多才にも程があります。」

『ふふ、ありがとう。楽しんでもらえたかな？』

「ああ、もちろん。」/「はい。とても。」

『良かった。私も久しぶりだから緊張したけど、とても楽しかったよ。』

「これからも、たまにやってくれよ。演奏会みたいな感じでさ。楽しそうじゃん。」

『ふふ、たまになら、ね？』

「言ったな？頼んだらやってくれよ？」

『はいはい。いくらでもするよ、それくらい。』

そんな会話を眠くなるまで続けた。二人はよっぽど楽しかったのだろう。声のトーンが少し明るい。喜んでもらえて良かった。

…こんな幸せがずっと続きますように。そう願わずにはいられない。

…知っている、ずっと、なんて無い。私が一番よく知っている。なら、私がこの日常を守ろう。どんなことからも。どんな手を使ってでも。

寝る前に、心の中でそう決心した。