私は英雄の家に居候しています。 (ページ2)

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1話　私が拾われた日ページ2

いつだっただろう、「英雄さん」に拾われたのは。

幼いころ家族を失った後、変な組織に攫われ人体実験の被検体となった。
そこからは地獄の日々だった。来る日も実験、実験、実験.....時には死にかけたりもした。
おかげで変な能力にも目覚め、実験は更にヒートアップしていった。

『早く...ここから逃げないと。今度こそ耐えずに死ぬかもしれない...』

私はこの施設から、組織から逃れるためにAIを作った。
そのAIでカメラやセキュリティーを乗っ取り、施設内が混乱している隙に逃げ出した。その先、どうやって逃げ切ったかはあまり覚えていない。気が付いたころには街にいた。行く当てなどないため、街中をふらふらと彷徨い続けた。そんな時だ。彼に会ったのは。

「おい、お前。大丈夫か？」

『.......』

「おい、大丈夫かって聞いてんだよ。まぁ、見るからに大丈夫そうではないが。」

この人、よく私に声掛けれたなぁ。髪はボサボサ、靴は履いておらず裸足で街の人からもあからさまに避けられているのに。

「お、やっとこっち見たな。なぁ、お前どこから来たんだ？その様子から察しはできるが、行く当てはあるのか？」

....察してるなら聞かなくてもいい気がするんだけど。

『おにーさんの察し通り、行く当てなんてないよ。
何、拾ってくれるの？』

私はおどけたように言った。中途半端な優しさはいらない。悲しくなるだけだから。

「あ？....まぁ、別にいいけど。」

『....は？本気で言ってるの？悪い冗談ならやめてほしいんだけど。』

「別に冗談なんて言ってねぇよ。ま、条件ならあるがな。」

....わかってる。彼が嘘を付いてないことぐらいわかってる。彼の表情から嘘はないと読めたから。ただ怖いだけ。人を信じて裏切られたら？いつか捨てられたら？
考えても意味のないことばかり考えてしまう。

「眉間にしわがよっているぞ。...じゃあ先に条件を言う。１、何があったのかをいつか教える事。２、家の仕事をすること。３、ちゃんと就職して働くこと。これが条件だ。さ、どうする？」

なんだそれ。条件って言うからもっと厳しいやつを想像してたのに、本当にそれだけか？
まぁ、行く当てなどない私からしたら、行かないという選択肢など元から無いのだが。

『....お世話になります。』

「ん、わかった。じゃ行くぞ。」

それから、私の居候生活は始まった。