知らなくていいこと 《佐藤景瑚》

Dream12. ページ12

多くの人を笑顔にするアイドルの景瑚


どこにでもいる一般人の私



今まで気にしてこなかった分、現実を突きつけられてその場から動けなくなった。

実際気にしてこなかったんじゃなくて、気にしないようにしてただけの自分。

そんな自分のせいで景瑚は自分から離れていったんじゃないか。
自分の価値観を無理やり押し付けて嫌な思いをさせてたんじゃないか。

次々とネガティブな考えが出てきてしまう。



気がつけば涙がポロポロと頬を伝っていた。

｢…昨日あんなに泣いたでしょ。
止まって。なんで、止まらないの、やだ｣

自分がこんなに未練タラタラな女だとは思ってなかった。


テレビの画面に満面の笑みでメンバーと喋ってる景瑚が映る。
私がこんな幸せそうな景瑚を見たのはいつだろう。



(えまってAなに俺のグッズ買ってんの！？！？)
(そりゃあ応援するファンとして買わないとと思って、、)
(いやいや家に自分がいっぱいいるの怖いんだけど！
どうせなら純喜くんにしとこうよ！)
(なんで純喜くんなの！？笑
とにかくこれが気に入ってるので大丈夫ですー)
(そんなの買わなくても俺が貰ってきてあげるのに)
(ダメ！！私だけがいい思いしたらファンの子に失礼でしょ！！)
(何それかわいいなーー笑)
(待ってやめて急に抱きついて来ないで！笑)


幸せな記憶ばっかりが蘇ってくる。


(ねえAまたオリコン1位だったよ！！)
(すごいね景瑚もJO1のみんなも頑張ってたもんねおめでとう、、！！)
(えなんでAが泣いてるのーー笑)
(なんか嬉しくなっちゃったほんとにおめでとうーーー泣)



ｶﾞﾀﾝ
｢あれ、、、｣
気づいたら視界が180°変わっていた。
頬に当たる床が冷たい。

自分が倒れたことを理解するのに時間がかかった。
体が思うように動いてくれない。


〜♪(着信)
誰かからの着信音を最後にわたしの意識は途切れた。

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