頑張る君に、幸運を。２ ページ17
昼休みに少し時間を下さい、と後輩である研修医に頼まれたAは呼び出された屋上へ続く階段を登っていた。
声からして深刻そうな話であるのは大方の予想がついているが、仮に相談された事に対して自分が相手の為になるアドバイスが出来るだろうか…と少し不安になる。
「大丈夫だといいんだけど……。」
扉の前で一言だけそう呟くと、Aはドアノブへ手をかけた。途端に体を包む外気はちょっと冷たくて、おもわず身震いしてしまう。
「あっ……先輩。」
「ごめんね、遅くなっちゃって。」
「いいえ。すみません…先輩もお忙しいのに、わざわざお時間取っていただいて。」
「大丈夫。今日は外来診療がないから、時間はあるの。とりあえずベンチに座って話さない？」
そっと後輩の背に手を添えて屋上にあるベンチへ腰掛けるように促せば、突然、彼女の瞳から溢れる涙。
どうやら耐え切れずに溢れてしまったようだ。
「ひっく……わ、私っ……！」
「ゆっくりでいいよ。我慢しないで、貴女の話を聞かせて？」
「っ……一昨日、担当してた患者さん…っ…亡くなってしまったんです…！」
「……うん。」
「私っ…力不足で……！救えませんでした。退院するのっ…楽しみにしてたのに…！」
「そっか……。」
「先輩っ…私、もうこんな思いに耐えられる自信がありません！医者なんて……っ、到底私に出来ませんよっ…！！」
あぁ、やっぱり壁にぶつかったな。
そう思いながら、涙を流し訴えてくる研修医の彼女を、Aは複雑な気持ちで見つめる。
担当患者の死を目の当たりにし、向き合う事。
…それは医者になった人間が必ず経験する事であり、立ち向かわなければならない壁でもあるのだ。
医者には救える命がある。
でも、医者にも救えない命だってある。
それがどんなに正しい治療を施したとしても、寿命という時期を迎えた命は儚く散るのだ。
自然の摂理とも言えるそれを、自分の中で消化するには時間がかかる人間が多い。
そう思うのは、Aも己の中での消化に時間を有した経験があるからだろう。
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カシオレ(プロフ) - exさん» はじめまして！コメントありがとうございました！励みになります。近々、めがねの続きをアップする予定ですので、これからもよろしくお願いします。 (2021年10月2日 17時) (
レス) id: 4f6cb09541 (このIDを非表示/違反報告)
ex(プロフ) - めがねの続き気になります！更新頑張って下さい！ (2021年10月2日 15時) (レス) @page10 id: 905bf9a542 (このIDを非表示/違反報告)
カシオレ(プロフ) - 。さん» ご指摘ありがとうございます！不明な点などあり、未熟ですが、これからもよろしくお願いします。 (2021年9月22日 19時) (レス) id: 4f6cb09541 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：カシオレ | 作成日時：2021年9月22日 14時
