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#18 誰彼 ページ19

環は外に逃げるように出た。私も追いかけるように家から出た。理の悲しそうな顔に尾を引かれたが、またね、とだけ言っておいた。

走らなくても、男の子の足は速くて、近くの公園に入ったことは分かった。息切れをしながらも追いかけると環はブランコに座っている。ゆらゆら、とゆっくり揺れて、下を向いている。

「ねえ」
しゃがんで小さい子をあやすように話す。

「••••なんで、家族なのに一緒に住めないんだよ」
声を抑えてむせび泣きながら押し殺すように声に出す。私も返答に困って、黙り込んだ。法律で決まっているなんて答えも聞く耳を持たないだろう。その答えは野暮だ。
すう、と息を吸い込んで何か励ませる言葉を言おうと思ったが、何も言えなくて、彼を見上げて手を握った。何も言えない私が情けない、というか悔しい。






夜になりそうな時間。黄昏時、というのだろうか。誰そ彼時。あれから何も言えず、ずっと環のむせび泣いている声を聞いていた。

「そろそろ帰ろっか」
立ち上がって砂を払い落とした。すると彼は手の握りを強くする。小さい子が甘えるときようだ。もう少しで大人なのに。帰りたくない、というように私に視線を投げかけて、口を開こうとしたとき環のスマホが鳴った。電話のようだ。

「••••そーちゃん、••••うん、ごめん」

その、『そーちゃん』という人に公園の場所を伝え、環はひと呼吸置いた。

「今からそーちゃんが迎えに来てくれるって」

そーちゃん、が誰なのかは分からないがとりあえず帰るみたいだ。環は落ち着いたものの、複雑な表情をしている。二人で黙り込んで、カラスの鳴き声だけが公園に響く。遊んでいた子供達は帰る時間なようだが、もともとこの公園には人が居なかった。近くで町内会の小さなお祭りか何かがあったようだ。公園の前に『町内会祭り』という旗が掲げてある。一緒にお祭りに行こう、という雰囲気ではないから言うのはやめておく。

「ねえ、A」

環はじっとこちらの目を見て言う。

「ん?何?」


「Aも遠くに行っちゃうの?」

寂しそうな目で言う彼に私の胸は少し苦しくなった。

「行かないよ、ずっと友達だから大丈夫」
笑って言う。すると環はうん、と頷きながらも物憂げに下に見やった。ふと、腕を優しく引っ張られ、抱き寄せられた。


「••••友達でいいの?」

#19 緊張→←#17 否定



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なつめみく - ええええ?!神!!すげーはまった!!なんか、たまきってめっちゃ可愛い!!今まで三月推しだったから盲目すぎて三月にばっか結婚しようとかいっちゃってたけどたまきも推しになりそー!!!がち可愛い!!! (9月28日 16時) (レス) @page26 id: ba14ff85c6 (このIDを非表示/違反報告)

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作成日時:2018年7月13日 22時

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