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31話 ページ33

私は昔からお母さんの言いつけを守ってきた方だ
決まって言われてきたことは”人のために動きなさい”だった


自分だけを優先にして動くのではなく、相手のことを思って人のためになる行動をしなさいってことだと思う。


だけど、その事の本当の意味は幼い頃の私にはよく分からなかった。
よく分からず、そのまま歳を重ねていった。
でも、昔からの言いつけを守ってきていたため、もはや私は”それ”が定着していた


だからなのかもしれない、疑問を持たなかったのは。


でも今はよくわからない。
だって昔からの言いつけをもうやらなくていいって……



「ねぇ、……どうして?どうしてやらなくていいの?それに何で今なの?」


そうだよ、何でこんなに急に……


だってそうでしょ?

そもそも私は事故の時、”あの子”を助けたから大好きなバレーが今できなくなってる。

それに事故に遭わなかったら新山女子の皆んなに負い目を感じず離れずに済んだのに。

合宿の時だって、事故さえなければ脚を痛めずに済んだのに。
手術も、今リハビリしなくてよかったはずじゃん。



新山女子の皆んなにも、音駒の皆んなにも、徹や岩ちゃんにも、余計な心配させずに済んだのに……



何で、今なの?





母「……何でお母さんがこんなこと椿に言うか分かる?」


「……」


毋「そうよね。椿って昔は結構おてんばで、ガキ大将みたいなとこあったのよ?」


「え?」


母「あら、これは覚えてないのね笑」



全然記憶にない……
多分記憶がないのは事故の後遺症なんだろうな…
所々が抜けてるから。


母「結構乱暴なとこがあってね、それこそ昔は徹君のこと毎日泣かせてたわ」


「え!」


信じがたい……


母「だから、そんな椿にはいつしか、人のために動きなさいって言うようになってたわ。」


昔の私を躾けるためにいってたのか……


母「でもね、ちょっと驚いた事があってね」


「?」


母「それを言うようになってから、椿は何でも聞き分けのいい素直な優しい子に育ったのよ」


「え?」


母「お母さんね、優しい子に育つぶんには良いと思ってたの。だけど、その優しさが結果的に椿が事故に遭うことになった」


「……」


母「昏睡状態になった時は自分を恨んだわ。なりふり構わず、自分を捨ててまで人のために動く子に育てた事に。だからね、お母さん決めてたの。椿がもし目を覚ましたら、椿の好きな様にさせようって」





「……おかあ、さ、ん」

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作者名:椿 | 作成日時:2020年5月3日 21時

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