榎本径の奥さんになってからも

十一話 ページ11

西園寺｢それじゃあ、Aさん♪また♪｣

A｢は、はい…｣

微笑まれたら、誰もがうっとりしてしまいそうな笑顔を残して…彼女は家へ帰っていった…

…結局、西園寺さんにつかまって…一緒に買い物をするはめになってしまった…←笑

A｢…つ、疲れた…｣

玄関ドアを開け、思わず座り込むあたし…

スーパーで買い物してる間も、ずっと隣にいて…

『今日の夕飯、何にするんですか？』とか…
『旦那様は何が好きなんですか？』とか…
質問責めで…正直ぐったり…←笑

おちおち、食材も選べないっつーの…←笑

まぁ…悪い人ではない、と思うんだけど…
ちょっと…ニガテなタイプ…かなぁ…

…径のこと…なんだか気にいっちゃったみたいだし…
…そんなの…困る…

…玄関先に座り込み、大きくため息をつくあたしを…ベビーカーから、心配そうにみつめるきい…

きい｢…マーマ…」

A｢あっ！ゴメンね！きい…」

あたしは慌ててきいを抱き上げる。

きい｢ママぁ…」

あたしの不安な気持ちを悟ったかのように…小さい手のひらを、めいいっぱい広げてあたしの胸に抱きつくきい…

その小さくて…あったかい温もりに、胸の中のイヤな気持ちがふわっと、溶けていくような気がした…

A｢…ありがとね…きい…ママ、大丈夫だよ♪｣

きいの温もりを胸に感じて、ちょっと安心したあたし…

A｢さっ！お掃除と、夕飯の下ごしらえ…しなくちゃね！｣

きいを優しく抱きしめながら、あたしは気を取り直してキッチンに向かった。

今日の夕飯は、径の大好きなカニクリームコロッケ…がんばって作らないと♪

…径の帰りを待ちながら…あたしは夕飯の準備をすすめた…

……掃除、洗濯、夕飯の準備…
ひとしきり、家事を終え…あたしはきいを抱っこしながらリビングのソファに座り、径の帰りを待った…

A｢…パパ…早く帰ってこないかなぁ…ね、きい♪｣

きい｢パパ!!パパ!!｣

笑顔で、パパを連呼するきいに思わず笑みが溢れる…

…すると…！
いつもよりも一時間も早く玄関扉の開く音…！

えっ!?径!?…もう帰ってきたの!?

きいを抱き上げながら、あたしは小走りに玄関へ向かった…

径｢ただいま…｣

A｢径!!どーしたの？こんなに早く…｣

あたしの問いかけに、径はふんわりと微笑みながら首を傾げる…

径｢…言ったでしょう…早く帰ってきますから…って…｣

眼鏡の奥の瞳が、意味ありげに煌めいて…あたしは思わず、ドキリとした…！

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