幸せはきっと僕の手の中に…

44話 ページ44

…仕事も早く終わったし…行って、みよーかな…健太くんのところ…

…あたしは急いで家に帰り、マドレーヌを焼くことにした♪

…せっかくだからお菓子作って持っていこう♪
お父さんとお姉さん、あとかっちゃんサンの分…

少し照れたように喜ぶ、健太くんの笑顔が目に浮かぶ…

…健太くん、喜んでくれるかなぁ…♪

あたしは手早くマドレーヌを作り終え、ワクワクしながら健太くんのお家に向かった。

…焼き立てのマドレーヌの入った箱を片手に、あたしは一人土手を歩く。
この間、健太くんと二人で歩いた道…
…あんなコトの後だったから…笑
ドキドキして、何を話したか覚えてないんだけど…

『…またな…』

そう言って、照れくさそうに笑う健太くんの笑顔だけは覚えてる…
あたしの大好きな、口の端をちょっとだけあげて笑う顔…

…そんな健太くんが…たまらなく…大好き…

健太くんを思い出して、一人微笑むあたし…

…でも、次の瞬間…信じられない光景が、目に入ってきた…

…ふと、健太くんの声が聞こえた気がして…顔を上げると、そこには大好きな健太くんの姿…！
今日も細身の黒いブルゾンがよく似合ってる♪
その姿に思わず駆け寄るあたし…！

…健太くん！………あ、れ…？

いつもと違う、寂しそうな表情をする健太くんに、あたしは首を傾げた…

その、寂しげな視線の先には…

A｢…アカ、ネ…さん…？｣
…白いニット帽を深く被って、健太くんに背を向ける、アカネさんの姿が…そこにあった…

A｢…どー、して…｣

…あたしの手から、マドレーヌの入った箱が…音もなく…滑り落ちた…

………そこから先は、どーやって家に帰ったのか…覚えていない…

…ただ…ずっと、ずっと…色んなことを考えてた…
…健太くんの大事なバンドの仲間だった人で…たまに会うくらい、普通のことなのかも…

…でも、元…彼女…そういう関係で、会いにきたの…？
…あたしだって、子供じゃない…昔の彼女と会ってるくらいで…嫉妬なんか、したくない…

でも…でも…

A｢…そんなの…ヤダ…｣
…自分でも、どうしようもできないくらい…こぼれ落ちる涙は…止められなかった…

…健太くんのお家に行って、お父さんとお姉さんに会って…小さい頃の写真を見て…健太くんからの…初めての、キス…

…でも、それだって…アカネさんにも同じようにしてきたこと…？

そう思ったら…涙は全然、止まらなくて…
へこんだマドレーヌの箱に、いくつも涙の滲みをつくった…

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