幸せはきっと僕の手の中に…

35話 ページ35

健太｢…今日は、わりぃな…家に、来てもらうことになっちまって…｣

…ポケットに手を入れて、ちょっと申し訳なさそうに呟く健太くん…
そんな健太くんとは、正反対にあたしは満面の笑顔で健太くんに笑いかける。

A｢悪いだなんて…健太くんのお家に呼ばれるなんて嬉しい♪凄い楽しみ♪｣

…どうやら、最近彼女ができたってコトを、健太くんのお父さんとお姉さんに突っ込まれたらしい…笑
それで、家に連れて来なさい…っていう話になったみたいで…
思いがけないお誘いに、凄く嬉しいけど…ちょっと、緊張…しちゃう…

健太くんのお家の近くの土手を、のんびりと歩きながらあたしはふと…隣を歩く健太くんを見つめた…

……この、間…健太くんがウチに来たとき…
どーなっちゃうかと、思った…

リモコンの取り合いで(笑)ふいに健太くんに抱きついちゃったみたいになって…

…細いけど、意外に筋肉質な健太くんの腕の中…息がかかるほどの近くに、健太くんの…甘い眼差し…

ほんとは…あのまま、ずっと…健太くんの腕の中にいたかったな…

ぼんやりとそんなことを考えながら、健太くんの横顔を見つめていると…

健太｢ん？どした？｣
優しくあたしを覗きこむ、健太くんの澄んだ瞳…！

あたしの考えてたことが、見透かされそうで…あたしは慌てて俯いた…！

A｢う、ううん！…健太くんのお父さんとお姉さんに会うの、緊張しちゃうな…って思って…｣
思わず、自分の格好を確認する…
…ファー付きのダッフルコートに、膝丈のベージュのワンピ…

…大丈夫、かなぁ…笑

コートの胸元をおさえて、深呼吸するあたしを見て…健太くんは、口の端をあげてクスリと笑う…

健太｢ばか…大丈夫に、決まってんだろ…緊張なんかするなよ…｣

A｢…うん♪｣
あたしはそっと、健太くんの肘に掴まり…隣に寄り添った…

…歩くこと、数分…

一軒家と工場が一緒になった健太くんのお家。
そこには｢矢野プレス工場｣のおっきな看板。

外にある階段を上りながら、健太くんが案内してくれる。

健太｢工場が下で、上が家…｣
そう言いながら、玄関ドアをちょっと乱暴に開ける健太くん…

A｢…あ、お邪魔します…！｣
ちょっと、いや、かなり…ドキドキしながら、あたしは玄関ドアをくぐった…

健太｢…あれ？…ねーちゃん？｣

入ってすぐ左にキッチンがあって…その奥はこたつのあるあったかそうなリビング…

でも…お父さんもお姉さんも、いないみたい…

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