幸せはきっと僕の手の中に…

19話 健太 ページ19

収録を終えて、俺は昨日のことをぼんやりと思い出す…

…久しぶりに会ったな…明音…すっかり芸能人みたいになってた…つーか、俺も一応芸能人か…
そう思って、今まで着てたフザケた衣裳に目をおとす…←コラコラ！

…でも…これはこれで…楽しい、か…

『夢のある、お仕事じゃないですか♪』
そう言って、瞳をキラキラさせて喜ぶアイツの笑顔が目に浮かぶ…。

…まぁ、一人でもそう思ってくれる奴がいるなら…続けてやってもいいか…歌の…お兄さん…

ほんとに無邪気っつーか、天然っつーか…ナンパされてんだから…断れよ!!
知らない男に肩を抱かれた姿を思いだし、思わずムッとする俺…。

…ちっちゃくて、柔らかかったなぁ…アイツ…

華奢な肩に、服の上からでも分かる細い腕…彼女を掴んだ掌の感触が思い出されて…自然と胸の鼓動が速くなる…

…おまけに…息がかかるほどの距離に、俺を見上げる潤んだ瞳に、小さい唇…鼻先をかすめる甘い髪の匂い…

あのまま…明音に声、かけられなかったら…俺…どーしてた…!?
…つーか！俺、ずっとアイツのことばっか考えてる…！
…これじゃ、俺…アイツのこと、好きみたいじゃんか!!

守｢矢野くん、早く帰ろうよ〜｣
俺が悶々と考えてると、隣で着替えてる守に声をかけられる。
…守→俺と一緒で歌のお兄さん…俺と正反対…笑…真面目で、いい奴。

色の抜けた細身のジーンズ、細身のT シャツとブルゾンに袖を通し、俺は守と楽屋を出た。

健太｢あーあ、煙草…すいてぇなぁ〜｣

守｢ダメだよ！矢野くん！歌のお兄さんは、清く、正しく、美しく…｣

健太｢はいはい…｣
そんな会話をしながらエントランスを出ようとする俺達…すると…

守｢あれ？うちの局の前に、若い女の子がいるなんて珍しい…ね、矢野くん｣

健太｢あ？｣
守に言われて、ふと窓の外に目をやる…

守｢しかも…カワイイ子だよ♪｣

次の瞬間…！俺は、自分の目を…疑った…！

ア、アイツ…!?

そこには、子供に紛れて…何やら熱弁？しているアイツの姿がっ!!
俺は守と別れて、急いで外に走った…！

A｢そんなことないもん!!歌のお兄さんて、凄いんだよっ！｣
…必死にそう言う…アイツの可愛い声が、聞こえる…

…つーか、アイツ…子供相手になに言ってんだよ…笑

｢別に凄くなんかないよな…｣
子供達に言い返されて、言葉に詰まるアイツの小さな背中に…思わず笑みが溢れる…。

20話 健太→←18話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す