幸せはきっと僕の手の中に…

17話 ページ17

A｢…前の…彼女…さん…かぁ…｣

健太さんと別れて、一人家へ帰るあたし…
さっきの切なそうに輝く健太さんの揺らめく瞳が…目に焼きついて、離れない…

『………それでもって……元…彼女…』

…帰り道、歩きながら話してくれた…健太さんの過去…
健太さんのバンドのメンバーは、健太さん抜きでメジャーデビューを決めていて、それで…彼女とも自然に離れていってしまったって…

健太さんは笑いながら話してくれてたけど…
その瞳は、寂しげに揺れていて…聞いてるあたしは、なんだか悲しくなってしまった…。

…子供みたいなキラキラの瞳…でも、時折見せる…寂しげな表情は…
このことが、あったからなんだ…

健太さん…どれだけ、辛かったんだろう…
バンドのメンバーも、彼女も…両方…失って…

さっき見た健太さんの元彼女をふと、思い出す…
…可愛らしい、人…だったなぁ…
あたしの知らない健太さんを、知ってる人…

…もっと早く、健太さんに出会えてたら…昔の健太さんのこと…いっぱい知ることが出来たのに…
出会う前の時を、取り戻せたらいい…

そんなことを思いながら、あたしは大きなため息をついた…
なんだか、切なくなって…涙が溢れそうになる…

…そういえば、さっき…ふいに健太さんに抱き寄せられた時…心臓が、止まるかと思った…

…あたしを抱き寄せる、細いけど力強い腕…あたしがすっぽり収まっちゃうくらい、意外に広い胸…頬にあたるゴツゴツしたネックレスに、健太さんとの距離の近さを感じて…息が、止まるかと…思った…

…それに…息がかかるほどの距離に、健太さんの揺らめく瞳…
思わずそのまま…自分の気持ちを言ってしまいそうになった…。

A｢…健太さんが…健太さんのことが…
……好きです…って……｣

一人歩きながら呟いてみても、あたしの言葉は虚しく冬の空に消えていって…健太さんには…届かない…

目に滲んだ涙が溢れないように、空を見上げるしか…今のあたしには、できなかった…


………その夜…あたしは初めてコンビニでお酒を買って、一人で飲んだ…。
翌朝…生まれて初めて、二日酔い…と言うもののツラさを知った…(笑)

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