幸せはきっと僕の手の中に…

16話 ページ16

…健太さんのただならぬ雰囲気に、思わず首を傾げるあたし…

…健太さん…？知り合い？

…あたし達の横をすごい勢いで通り過ぎていった車から、一人の女の子が慌てて出てきて…
その子を見た途端…健太さんの顔つきが…
変わった…。

明音｢…健太…？｣
…彼女も、びっくりしたように、健太さんの名前を呟いた…！

…やっぱり…知り合い…なんだ…

…カワイイ、人…。
ぱっちりした大きな瞳と愛らしい表情…ハードな感じの服に、女の子らしさも加わっていて…健太さんの隣にいたら…お似合いなんだろうなぁ…なんて、思ってしまった…

明音｢…久し振り…｣

健太｢…おう…｣

…彼女の方も見ないで、俯きながら返事をする健太さん…
その瞳は、さっきまでの子供みたいなキラキラした輝きは無くなっていて…
代わりに…寂しそうに、揺らめいていた…

…あたしの腕を掴む、健太さんの手に力が込められる…！

…健太、さん…!?

健太｢…わりぃ…俺…急いでっから…｣

明音｢健太…！｣
…彼女の呼び掛けにも答えず、健太さんはあたしの腕を掴んで…彼女の前から去っていった…。

…早足で歩く健太さんに引っ張られながら、歩くこと数分…健太さんの表情は、さっきまでの寂しげな瞳のままで…気安く話しかけられない…

…健太さん…どーしたの…？

すると、突然…！

健太｢…あっ！…わ、わりぃ…！｣
あたしの腕をずっと掴んでいたことに気づいて…慌てて手を離す健太さん…！

A｢…いえ！…大丈夫、です！｣

…ポケットに手を入れながら、今度はゆっくりとしたしたペースで、健太さんは歩きだした…
あたしも黙って…健太さんの後を着いて歩いていく…

…さっきの、カワイイ人…誰なんだろう…
名前…呼び捨てで、呼んでたし…ただの知り合い…って…感じじゃ、なかった…

…あたしの胸の中は、モヤモヤした気持ちでいっぱいになる…

そんなあたしの気持ちを見透かすように、健太さんは…空を見上げて、ポツリと呟いた…

健太｢…さっきの奴さぁ…昔のバンドの仲間…｣

…さっき話してた、やめちゃったバンドのこと…？

健太｢…それでもって……元…彼女…｣
そう言った…健太さんの瞳は、ゆらゆらと…不安定に揺れていた…

…前の………彼女さん…なんだ…

なんだか、心臓が掴まれたみたいに…苦しくなる…
当たり前だけど、彼女はあたしの何倍も…あたしの知らない健太さんを、知ってるんだ…

そう思うと、切なくなって…健太さんの顔が、まっすぐ…見れなかった…

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