姉さん 。【伊黒小芭内】

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「俺、もう幸せだよ」









数週間前まで怯えた顔をしていた子が、目の前で微笑みながら私にそう言った
その言葉を聞いて目頭が熱くなる

私はぐっと堪えてその場にしゃがみ小芭内を見上げ、そして手を取り、ぎゅっと握りしめる。









「…ごめんね、小芭内。
君の気持ちも聞かないで、私一人で決めて」









“ その子の気持ちはちゃんと聞いたのか “
頭に浮かぶのは、師範からの手紙に書いてあったあの言葉
私一人で決めてしまった
だから今度はしっかり聞かないと

私はそう思いながらゆっくりと言葉を紡いでいく









「私は、たくさんの人を鬼から守らなきゃいけない
屋敷にいられる時間も少ない

きっとたくさん寂しい思いをさせる
私は君を幸せに出来ないかもしれない
……ねえ、小芭内本当に良いの？」








「…それでも、俺はお姉さんがいい」









小芭内は私の手をぎゅっと握り返しながらそう言った
私は手を額に押し付け、下を向く








「…そっか、そっかあ……」









そんな表情で、そんな泣きそうな、けれど真っ直ぐな目で言われたら断れなくて
それどころか、むしろ逆で

小さな手
これからも、傍で守っていきたいと思ってしまった手
だけど本当にいいの？鬼狩りの私なんかと一緒にいて

ずっと下を向きそう考えていると、私の手を力強く握りしめ小芭内はこう言った









「俺お姉さんじゃなきゃ、嫌だよ」









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