肆 ページ5
駆け足で審神者部屋へと向かう二人と一匹。
加州「もうすぐだよ!」
すると次の瞬間、死角になっていた曲がり角から黒い何かが出てきた。
風を切る音と共に、加州の腕を掴み後方へとさがる。
「…チッ」
『…綺麗な小刀』
相手は数歩後方へと退り、こちらを睨む。
加州「ッ…薬研…」
薬研「…あんたも懲りねぇな、加州の旦那」
ボロボロの戦闘服に身を包み、短刀を構える薬研藤四郎。
Aに向けるその瞳には、怒りと恐怖が混ざり合い曇っていた。
加州「薬研、この人は信用出来る」
Aを守るように前に出た加州。
だが、Aにはその背中は物凄く小さく見えた。
薬研「確信は?」
加州「それはッ……」
薬研の言葉に詰まり顔を俯かせる加州。
薬研「人間なんて信用出来ない、初期刀のあんたが一番わかってるだろ」
加州「ッ…でも!」
薬研「大将とは違うってか?
その言葉はもう聞き飽きたッ!!」
怒りに顔を歪ませ声を荒らげて怒鳴る薬研。
薬研「あんたがそうやって新しい奴を連れてくるから、いつまで経ってもこの地獄から抜け出せねぇんだろ!!」
加州「ッ……」
怒り、悲しみ、苦しみ、それらを身をもって味わってきた彼らにとって、新しい者が来るというのは地獄の繰り返しでしか無かった。
薬研「……期待は早々に捨てたほうが身のためぜ」
『それはどうかな』
先刻まで黙って二人を見ていたAが口を開いた。
そんなAに目を細め睨む薬研。
薬研「……どういう意味だ」
『神である貴方方が命令してくだされば私はそれに従います』
薬研「、は…?」
『だってそれが世間の普通というものだから。
神は人より上に立つべき御方、審神者に仕えようがそれは変わりません。
ですので、命令を下されば私は出来る限り遂行してみせましょう』
加州「主……」
薬研「…ハッ、忠実なその心、果たして
刀を構えたまま、試すような口ぶりで言葉を続ける。
その言葉には、どこか期待が入っているように見えた。
薬研「…人の子、命令だ、審神者を殺せ」
『___承知』
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作者名:( ˙-˙ ) | 作成日時:2020年7月24日 23時