君を甘やかしたい (ページ6)

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「重岡さん、おはようございます」

「おはよう」

朝から笑顔で挨拶する神山くんは、ローテンションの俺には眩しかった。
誰にでも明るく接するからきっと皆んなに顔覚えられてるし、本当に俺とは対称的やと思う。

照史からは会社のことだけじゃなく社会人としての礼儀や常識を教えるのも先輩の役目って言われてるけど、ここ数週間見てて教える必要がないくらい神山くんは本当にしっかりした子やなって思った。
親の教育が良かったんやろうな。

「重岡くん、教えるの板についてきたんじゃない？
隣の子リラックスしてるし」

「そう？
俺も色々思い出しながらやけどな」

「頑張ってるんやね。
そうや、私今度の納涼会の幹事になったから参加してね。またお店決まったら言うから」

「んー、気が向いたらな」

「去年も来なかったんやから今年こそは来てよ？」

「考えとく」

「よろしくね」

同期の笹本は別の新人を指導してるけど、たまに俺に話しかけてくる。
…納涼会かぁ、行きたくないなぁ。
もともと飲み会は好きじゃないし、流星しか話し相手おらんし。
流星もたまにしか行かないし。

「あの…、」

「どうした？」

「さっきの納涼会の話、
重岡さん行かないんですか？」

「俺あまり飲み会好きじゃないねん。
神山くんも無理しないでええよ」

「でも、１年目は全員参加なんです。
初めてやから、緊張してて、
…重岡さんいたら、良いなって思って、」

図々しいこと言ってすみませんと付け加えると、神山くんは顔を真っ赤にして俯いた。
膝の上の手が少し震えてる。

そんな姿みると、守ってあげたくなるやん。
手に触れたくなるけど、なぜかいけない気がして肩に手を添えるだけにした。

「わかった、いくわ。
他のやつに絡まれるの怖かったら俺の隣にいれば良いよ」

「はい…！
ありがとうございます」

ホッとしたように微笑んだ神山くんを見てちょっと照れる。
あんな不安そうな瞳に見つめられたら誰だって何とかしてあげたいって思うやろ。

今のは先輩として然るべき対応であって、特別な感情じゃない。多分…
初めて先輩らしい振る舞いが出来たかもって思った。

流星に参加するって言ったらめっちゃびっくりされた。
神山くんにお願いされたからとは恥ずかしくて言えへんかった。