君を甘やかしたい (ページ24)

今日:12 hit、昨日:2 hit、合計:17,855 hit

▷24 ページ24

「落ち着いた？」

「うん、ありがとう」

「どうしたん。
なんかあった？」

「私、3年前父から縁談の話を持ちかけられたの。
父の会社に都合が良い取引先の人で、私も前から知り合いだったんやけど、紹介されたときにはもう婚約することが決まっていたようなものだったの。

でも私大毅のことが忘れられへんくて…、旦那に気がないのが伝わったんやと思う。
別れてくれって言われて、父からも上手くいってないのかって問い詰められるし、もう頼る人おらんくてっ…」

かつて、好きだった人の泣く姿を見るのはやっぱり少し辛い。
まるでその姿が３年前の自分を見ているように、あの時の光景がフラッシュバックする。

別れようって言われたあとかなり落ち込んだから、愛美と会うのは気が進まなかった。
きっとあの時の俺なら迷わずその手を引いていたんやろうな。

「愛美はどうしたいん？」

「私は…、出来れば大毅とやり直したい。
好きな気持ちは変わらないの」

「ごめん。
それは出来ひん」

「…付き合ってる人いるの？」

「いないけど、
好きな人はいる」

「…」

「大好きで守りたい人、大事にしたい人やねん」

「…そう、
ありがとう話聞いてくれて」

「ううん」

俺はもう過去に囚われないし、神山にまっすぐでいたい。
だから、愛美にしてあげられることはもうなかった。

「ごめん、俺もう仕事戻らないと」

「うん、ありがとう」

愛美はまだ涙ぐんでるけど、さっきの神山の顔が頭から離れなくて会社に戻った。

神山は席を外してるみたいやったけど、俺のデスクにいつものコーヒーが置いてあった。
聞かないでも神山が置いてくれたってわかる。

コーヒーがそんなに得意じゃないのに、いつもついでにって言うから、どこかで俺のこと考えてくれてるって嬉しくなる。

だから、俺も営業の日は必ず甘いものを神山に差し入れしてる。
黙って置いても一番最初に俺に声かけてくれるのが、暗黙の了解みたいになってた。