君を甘やかしたい (ページ15)

今日:13 hit、昨日:2 hit、合計:17,856 hit

▷15 ページ15

「じゃあ俺車返して帰るからまたな」

「お疲れ様でした」

「照史お疲れ」

駅前で照史と別れて神山と２人きり。
歩き出さない俺に心配そうな顔が向けられる。

「大丈夫ですか…？」

「あ、うん」

「心配なので僕送ってきます」

「大丈夫やって」

「ここ重岡さんの最寄りですよね。
家まで送ります」

「…あ、うん」

まっすぐな目で見られると断れなかった。
まだ少し動揺してる俺は、神山の目にどう写っているんやろうか。

さっきのことには触れずに、仕事の話を適当にして俺のマンションに向かう。

神山は穏やかに仕事の話をしていて、"いつも通り"の俺らの時間が流れる。
いつも俺が家まで送っていくって言ったら断られるのに、神山はちゃんと家まで来てくれて、なんかちょっと情けない。

「じゃあ、僕はここで。
お疲れ様でした」

「待って、
ちょっとうち寄っていかん？」

部屋はこの前片付けたばっかやし、お茶くらいは出せる。なによりまだ一緒にいたい。

「意外にきれいにしてるやろ」

「はい。
重岡さんらしいです」

「…あんな、
さっきの人元カノやねん。
最近結婚したらしいけど」

「まだ、好きなんですか」

「ううん。
一回俺の中で踏ん切りつけたから、
好きって感情はない」

「そうなんや」

「３年前付き合ってた。
俺は上手くいってるって思ってたんやけど、急に別れよって言われて、その半年後に俺の知らん人と婚約した。

理由も教えてくれんくてかなり落ち込んで、もう恋愛はしばらくええわってなった。

なのに、さっき会ったらあの時のこと謝りたいって言われて、
俺振り回されすぎやろ…。
動揺した自分がカッコ悪すぎて、本当最悪やわ」

「そんなことないです」

「…え」

「僕…、
物心ついた頃から祖父に育てられました。
両親の記憶はないです。

そのおじいちゃんも２年前に他界して、今は広い家に一人で住んでます。
犬と猫がいるから寂しくないですけどね。

…重岡さんは周りに大切な仲間がいるじゃないですか。
だからカッコ悪くも、最悪でもないです」

神山の顔はさっきと同じように穏やかだった。