君を甘やかしたい (ページ12)

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「しげ、神ちゃんみたいな彼女欲しいやろ」

「みたいなじゃなくて神山が良い」

前を歩く神山と小瀧に聞こえないように、そんな本音を流星に話すとやっぱりなって得意げな顔をされた。

今夜は、前から行ってみたいと言われていた濵ちゃんの店に神山を連れて行く約束をしてる。
外でご飯にいくのは、納涼会以来。
今回は流星たちにも声をかけなかった。
濵ちゃんに紹介するときは2人だけが良いって思ってたから。

「しげちゃん、お疲れ。
今日は2人？
隣の子はもしかして…」

「そ、後輩の神山」

「神山智洋です。
初めまして、お邪魔します」

「ふふ、いらっしゃい。
話はずっと聞いてたで。
ゆっくりしてってな」

「ありがとうございます」

神山は気が利いて、覚えるのが早い"なんでも出来る後輩"って俺がしょっちゅう話してるから、濵ちゃんも会ってみたいってずっと言ってた。

「神山って普段お酒飲むん？」

「甘いのなら少し…。
あまり強くなくて」

「じゃあ、この前の飲み会いっぱい飲まされて大変やったよな。
ごめんな、早く行けば良かった」

「そんな、全然です。
重岡さんいてくれてホッとしました」

両手でグラスを持ち、ニコニコと笑ってて可愛い。
神山の返答はいつも模範解答みたいに完璧で、相手が心地良い言葉を選んでくれる。

でも最近はそこに少し壁を感じる。
もっと心の内を話して欲しい。
バリアというかまだ打ち解けてない気がしてならなかった。

「最近は実家に帰ってるん？」

「えっと…、たまに帰ってます」

「今度、神山の家行ってみたい」

「…片付けておきますね。
僕も重岡さんのこと聞きたいです」

「ん、何でも聞いて」

「あの、…彼女いるんですか？」

「今はおらん」

「そうなんや。良かった」

「気になる子はいる」

「えぇ、
そうなんや…」

俺の言葉に一喜一憂するのが可愛い。
もちろん気になってるのは神山のこと。
素直には言われへんけど。

俺、誰よりも神山を大事にしたいって思うねん。
信頼して慕ってくれてるのが嬉しいし、なにより一緒にいたいって思う。

さっきからずっと飼ってる犬と猫の話をしてるけど、あまり頭に入ってこなくて。
それよりお酒で顔が紅潮して、目が潤んでる神山から目が離せなかった。