パープルベルベット《JUN》 (ページ17)

今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:86,193 hit

１７．朝ページ17

その日は家に帰ってから、寝るまであんまり記憶が無くて、朝日が眩しくて、目を覚ますと、朝になっていた。

30分くらいベットでボーッとして、そろそろ準備しないと、と思い体を起こした。

昨日買ったドレスに袖を通して、ファスナーをあげる。

「髪は上げた方がいいかな。」

サイドを軽く編んで後ろでまとめる。

引き出しから黒のリボンのバレッタを取り出して留めると、いつもより少し気合いを入れてメイクをした。

コーヒーを一杯飲んでから、ショート丈のトレンチコートを羽織って家を出た。

式は表参道のおしゃれな式場だった。
13時からと書いてあったので、12時半には式場の前にいた。

「知ってる人居ないからな。」

何となく気まずくて入口にたたずんでいた。

招待状を眺めていると、「Aちゃん？」と話しかけられた。
顔を上げると、父と同じ歳位の男性がこっちに向かって歩いてきた。

「は、はい。」

「やっぱり！お父さん来れないって聞いてたから。代わりにAちゃん来るって聞いて、楽しみにしてたんだ！幸子にそっくりになって。」

幸子は母の名前だった。

「あの…もしかして、隆弘さんですか？」

「そうそう。隆弘です。幸子の兄。つまりAちゃんの叔父さんかな。」

隆弘叔父さんはニコニコして、とてもいい人そうだった。
私もつられてニコッと笑った。

「前に会った時はこーんなに小さかったもんな。べっぴんさんになったなぁ。」

叔父さんは手のひらを子どもの背丈を表すように下げた。

「そろそろ時間か。知ってる人居ないだろうし、一緒に中に行こうか。」

「あっ、はい。」

叔父さんはうんうん言いながら扉を開けてくれた。