パープルベルベット《JUN》 (ページ8)

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８．手紙ページ8

私は目の前の光景があまりにも現実離れしていて、
状況がなかなか理解出来ないでいた。

よりによってこんな情けない姿を見られるなんて。最悪…。

「松本さんですよね？」と言いかけて、さすがにプライベートだろうし、気を使わせたくないと思い、いいかけた言葉を飲み込んだ。
彼も良かれと思って助けた子に騒がれるのも嫌だろう。

私は鞄を受け取り

「あの、本当にありがとうございました。」

と言って、ペコリとお辞儀をして、駅に向かって歩き出した。

さっき、サラリーマンに触られた肩に気持ち悪さと、怖さを感じて、駅までは出来る限り早く走った。

家に着いた時には、走った事もあってか、怖さは薄れていた。

松潤に会った事さえ実感が無く、ただの似た人だったのかも、なんて思った。

コップに水を入れて、ソファに座って飲むと、ポストに届いていた郵便物に目を通す。
すると見慣れた文字が目に入った。

「あ。お父さんだ。なんだろ？」

滅多に手紙なんて書くことのない父なので、何かあったのかな？と心配になった。

兄も、姉も７年ほど前に結婚して実家を出てしまっているし、私も６年前から一人暮らしをしている。

母は私が４歳の時に病気で亡くなっているので、父は今実家で犬と２人？で暮らしているのだ。