赤葦京治の寝起きは悪くない【赤葦京治】 (ページ9)

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「中庭あっちーな」
「すんげー人…」

パフォーマンスは中庭で行われる。

9月と言えど、その残暑は容赦なく屋根のない中庭を照らす。

俺たちが向かった時には既に人がいっぱいで、さらには、店番をする生徒たちも校舎の2階3階の窓から身を乗り出してカメラを構えていた。

「うん、よーく見える！」
「かわいい子いっぱいいんじゃん！」

木兎さんが人だかりをかき分けてずかずかと進むから、背の高い5人衆がかなり前のほうに来てしまって悪目立ちしていた。

「ゴー！梟谷」

「「「オー！」」」

「オー！！！」

20人がエンジンを組んで1人の掛け声に応え、ついでにうちの木兎さんも応える。

ギャラリーから聞こえた大声に部員たちは少し驚き、くすくすと笑う。

彼女も少し目を丸くして、そのあと表情を緩めた。

軽快な音楽が流れ、皆が綺麗な陣形を維持したまま動き出す。

「おー前見た時よりうまくなってる！」
「あ！あの子！めっちゃうまい子！」
「あらかわいい子じゃない」

６人ほどで組まれた型の上に、軽々と乗って抜群のバランスを保ち、くるりと大きく飛んでみせると、周囲から大きな拍手が沸き起こった。

まぶしい笑顔を振りまく周囲と比べて、彼女は躍る最中にあまり笑わないが、技を完成させた時、その場の誰にも負けない飛び切りの笑顔を見せる。

その笑顔がまた、俺の視線を独占する。

終盤、これまでより多くの人数によって組み立てられた型に、またもや彼女がひょいと乗る。

型の前には数人の「受け皿」が用意されていて、これから行われる技の大きさを物語る。

その部員たちの少し緊張した面持ちにごくりと周囲までも息をのむなか、型のてっぺんにいる彼女だけは自信に満ちた表情をしていた。

彼女が迷いもなく踏み切り、宙を舞い、下降を始める。

「…蝶」

彼女につられて目線が空に持ち上げられる。

流れていた音楽と周囲の歓声が耳から遠ざかり、美しいフォームで下降する彼女を見つめて無意識にぽつりとそうつぶやいた。

その瞬間、

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