赤葦京治の寝起きは悪くない【赤葦京治】 (ページ4)

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４月の初旬は、まだまだ日が落ちるのが早い。

自主練が終わって体育館を閉める頃には、もうあたりは暗くなっていた。

先輩の後をついて体育館を後にする途中、明かりのついた隣の体育館の中が見えた。そこには１５名ほどの女子が、曲に合わせて四角く囲まれた線の中で飛んだり跳ねたりしながら一糸乱れぬ陣形を作っていた。

「おーチア部まだやってるー」
「ほかの部のインターハイとかと被らないように、大会時期ちょっと早いらしいじゃん？」
「なるほどなーいつも俺らの応援来てくれるもんなー！」
「チア部と言えばさー、仮入部終わったらかわいい１年探しにいこーぜ！！」
「えーでもあいつらって確か恋愛禁止じゃん？」
「別に狙ってねーよ！見るだけ見るだけ！」

会話から、梟谷はチアリーディングでも有名だと聞いたことがあったことを思い出す。

盛り上がる先輩を横目にちらりと体育館を覗くと、ほとんどがジャージを着る中、1人だけ体操服を着た初々しい姿が見えた。

自分と同じ1年だとすぐに分かった。見た限り、彼女はくるくると非常によく回り、周囲よりも多くの運動量をこなしている。

「ストップストップ！藍沢、飛びすぎて次の動作遅れてる。周りとテンポ合わせて」
「はい」

コーチらしき人がパンと手をたたくと全員動きを止め、手を後ろに組んで指示を待つ。

名指しの指示に体操着を着たあの子が返事をする。

「全員同じところから！はいすぐ戻れ」
「「「はい！」」」

無数に重なった女子特有の高い声が大きく体育館に響く。部員を指揮する女性は典型的な鬼コーチに見えた。

同じ曲の部分と同じふりつけが繰り返される。

指摘を受けていた少女は、集中を崩さないものの少し緊張した面持ちをしていた。

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