赤葦京治の寝起きは悪くない【赤葦京治】 (ページ13)

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目の前にいる彼女は舞台に立つ時の自信に満ちた姿とは反対に、

触れたら壊れてしまいそうなほど脆く、俺の庇護欲を煽る。

無意識に彼女に手が伸び、人差し指の甲で彼女の青白い肌をするりと撫でる。

『ん…』

顔を少し傾けて、俺の指に少しだけすり寄る彼女に、優しく心臓を握られる。

同時にゾクリと全身が震える。

力なく横たわる彼女。

誰もいない保健室。

今だけは、強くて美しい彼女の支配権を俺が握っている。

邪な感情が頭をよぎる。

「Aいる！？」

バン！とドアが開き、彼女の頬に伸ばしていた手を瞬時に下げる。

驚き波打つ心臓を抑えて振り向くと、彼女と同じユニフォームを着た部員がベッドに駆け寄ってくる。

「あ、失礼しました…ってA大丈夫！？」

「寝てます」

「…もしかしてこの子の世話してくれたんですか？」

「いえ、俺は…ちょうど今居合わせて、これは全部彼女がやったことだと思います」

その友人は俺の言葉を疑うことなく信じ、彼女に向けて大きなため息をつく。

「もーなんでいつも一人で全部やろうとするわけ…？」

非行に走りかけた自分を心の中でひっぱたき、

彼女を心配そうに見つめる友人が来たことに安心して、

彼女が起きる前に保健室を後にした。

1人で保健室を訪れた彼女。

想像以上に華奢な体。

指にすり寄ってきた彼女のやわらかさ。

俺の知っている彼女はいつも逞しく、憧れの存在だった。

でも俺はその日、強さと美しさの裏に隠れた彼女の脆さを知り、

その両面性を持ち合わせた彼女に自分でも呆れるほどハマっていた。

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