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Side Junta 〜2013.11〜
ななの様子がおかしいのなんて、改札の中に姿を見つけた時から気づいてて
俺らの所に来る前に、何かスイッチを切りかえたような
そんな姿に、無理に聞き出すことなんて出来なくて
「どうしたん?疲れた?」
遠回しの質問も、うまいことはぐらかされてしまった。
事務所に呼ばれた、なんて何かあった以外のなにものでもないのに
隠さなきゃいけないほどの何かがあったんやろうなーって
何となく感じる胸のざわつきを無かったことにして
照史と一緒に笑ってる俺は、
割と、うん、
彼氏としては失格かもしれへん。
稽古場に着いたかと思えば1人部屋を出て行くなな。
赤「あいつ、どうかしたんすか?」
「しげもそう思う?」
緑「女の子やし、って必死になってたりせんかったらええけど」
最近よく一緒にいるようになった年下組たちとそんな会話をしては、やっぱり気がかりで
1人、部屋を抜け出しななを探す
俺らのいる部屋からいちばん遠くて
いちばん、他の人からも見つからないような部屋から音が聞こえて
まさかと思って覗けば
これからやる曲を、無我夢中で踊るなながいた。
1曲終わる度に、ボーッと鏡の自分を見つめて
しゃがみこんで、タオルを投げて、
なあ、ほんまにどうしたんよ。
それでも今の俺に、そんな勇気はなくて
静かに自販機でスポドリを二本買って
ようやく落ち着いたらしいタイミングで部屋にはいる
まるで、今見つけたかのように。
「なな、こんなとこおったん?」
『あ、淳太くん』
「そろそろ戻らな、全体リハ始まんで」
『ぇ、うわ、もうそんな時間、ありがとうございます!』
焦って時計を確認して、慌てて荷物をまとめるななにスポドリを差し出せば、嬉しそうに飲んで
生き返ったーって笑いながら動き出す
「A」
『っえ、ちょ』
「大丈夫、周りちゃんと見てきたから」
『や、でも』
俺の気持ちの表れか。
一度ざわついた心はどうにもおさまらなくて
何となく不安になって、Aを引き寄せて抱きしめて
「全部話せなんて、そんなこと言わん、言わんけどさ」
「Aが苦しいのは、俺、嫌やからさ」
『じゅんくん?』
「話せるようになってからでいい。でも、絶対Aが笑える選択をして、お願いやから」
なんも分からへんよ、
けど、なんか迷いがあるような気がして
縋るように呟けば、
うん、と小さな返事が聞こえた
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作者名:るん | 作成日時:2023年5月14日 1時