345話 ページ8
一方、剣心は多量の出血と痛みに苦しみ、呼吸をするのがやっとの状態であった。
剣「か…は…」
剣心の前に立った縁には薄笑いは消え、表情の読めない復讐者の顔であった。
縁「どうだ、抜刀斎。姉さんと同じ傷は痛いカ?だが姉さんはもっと痛かったはず。ここで貴様の息の根を止めたら元も子もなくなる故、今は動けなくなる程度に途停めておいた。サァ…これで、準備は整った。これより、真の「人誅」に入る」
縁の合図と共に、壊れた夷腕坊からは煙が上がった。
左「煙!?」
外「只の煙幕だよ。乙和のと違って毒など、一切入ってないから案ずることはない」
縁「これで、余計な邪魔は防げる」
『……薫、合図したら道場の方へ走れ』
薫「でも、剣心が…!」
縁は剣心をその場に置き去りにすると、薫達の方へ、一歩一歩、確実に向かって来る。
縁「所詮…所詮、"死"などただ一瞬の痛み。それしきのコトでは、姉さんの無念も、俺の恨みも、決して晴れない。貴様は姉さんから許嫁を奪った………貴様は俺から姉さんを奪った______だから、今度は俺の番………今度は俺が、貴様から最も大事な存在を奪い!貴様を「生き地獄」に突き落とす!」
狂気に満ちた笑みを縁は浮かべ、更に一歩一歩、薫達の方へ向かう。その瞬間、剣心は本能的に警鐘が体中を駆け巡った。これこそが、雪代縁、究極の復讐、「人誅」であると。
恵「こっちに来る!」
斎「言わんこたぁない」
左「ヤロウ!!」
縁「邪魔ダヨ。西田A以外は退いてろ」
Aは縁らにいつ本名などが割れたのかが、皆目見当がつかず、その情報網に恐れをなした。
剣「待て…」
縁「まだ立てるのカ。いいからそこで、ジッとしていろ。貴様がくばってしまっては、せっかくの人誅が_____!?」
剣心が縁の右頬を殴ると黒メガネは地面に落ち、縁は驚きながらも、地に倒れる。
剣「…それだけは許さんぞ、縁…たとえ巴の本当の魂がお前に微笑んだとしても、それだけは絶対に許さんッ!!!」
激しい怒りを顕にする剣心に縁は驚嘆する。その頃、煙幕は周囲を覆い、辺りの見通しは悪くなっていた。
左「剣心は俺達で何とかする!恵!嬢ちゃんを連れて逃げろ!!」
『…薫、大丈夫だ。私は死んだりしない』
涙を流し始める薫にAは優しく微笑む。薫は涙を拭いながら、首を横に振る。
縁「フン…「それだけは絶対に許さん」か…いいネェ、結構なコトだ。貴様が守ろうと燃える程に、失った時の衝撃も大きく_____」
剣心は縁の腹部に再び殴り、柄頭で顎を打つ。
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作者名：つっさん | 作成日時：2021年2月24日 16時
