384話 ページ47
剣「………………もう…いいはずなのに…もう、疲れたはずなのに………はず……なのに………」
剣心は次第に逆刃刀を強く握りしめ、言葉をはっきりとさせる。
オ「………ここは、落人群という所はのう、聖者だろうと、罪人だろうと、来る者は拒まぬ。ただし、本当の住人になるには、あらゆる全てを捨ててもらわねばならん…「失くす」だけでは駄目でのう…何か一つでも「捨て」切れなかった者は、全て皆、その「捨て」切れなものを手に、再び立ち上がり、去っていく…君も____…」
剣「…駄目なんだ…まだ…見つかってないんだ…俺が犯した罪の…人斬りの罪を償う答が…どうしても見つからないんだ…」
どこか焦りを伴った剣心の様子に、オイボレは疑問を投げかける。
オ「そうかのう…君の心の弱々しい迷いとは裏腹に、君の手は強く握りしめて離さない…………大事なものを失って…身も心も疲れ果て…けれど。それでも決して捨てることが出来ない想いがあるのならば、誰が何と言おうと、それこそが、君だけの唯一の真実_______真実の_______…」
「出来るのは一つ。この目に映る人々の幸せを一つ一つ守るコトだけ………」
「剣一本でも、この目に映る人々くらいなら、なんとか守れるでござるよ」
「目の前の人々が苦しんでいる。多くの人が悲しんでいる。どんな理由であろうと、それを放っておくなど、俺はしたくない…」
オイボレの言葉によって、剣心は
オ「さて、そろそろ…
剣心は逆刃刀の鎖を壊す。オイボレはそれ以上何かを伝えたわけではない。入れ違いに隈がオイボレの元に来る。
隈「………行ったのか…」
オ「ああ、行ったよ」
隈「ったく、アンタは…本当に人が善過ぎるぜ」
オ「ホッホッホッ♡」
隈は剣心の座っていた位置とは反対側に腰をかける。
隈「しかしあの侍、よく立ち上がれたもんだな。トリ頭のニイちゃんや、元気のいい小娘が仇を討とうとかで来た時…ピクリともしねェでいたのに」
オ「「仇討ち」は彼の真実ではないからのう。どんなに叫んでも、声は彼の心には届きゃせんよ……… けれど、助けを叫ぶ声ならば、どんなに小さくても必ず届く…」
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作者名：つっさん | 作成日時：2021年2月24日 16時
