374話 ページ37
「へえ、けどまあ、俺等下っ端にはよくわからんし、関係ないコトだな」
「そういや。なあ、お前、知っているか。あの藤田警部補の正体」
「正体?」
「なんでも、実は、新撰組幹部の数少ない生き残りで、あの人斬り抜刀斎と互角に渡り合えた凄腕剣客って話だぜ」
「ホントか!」
その話を牢の中で聞いていた鯨波は"抜刀斎"という言葉のみに反応し、狂ったように叫ぶ。
鯨「バ…トウ…サイ、バットウサイ、バットウサイ、バットウサイ!!」
先程まで呑気に話していた警官も鯨波の異様な言動に危機感を覚える。しかし、牢の格子はメキメキと音がし、鯨波は力まかせに破壊し、脱走する。近くで談笑していた警官らは犠牲となったが、鯨波にはどうでもいい事と化していた。
「何事だ!!」
「脱走です!例の事件の隻腕の男が格子を破りました!」
「こっちです、副署長!!あの部屋に逃げ込みました!!」
扉の横には保管室と書かれており、それを見た副署長は警官達を止め、顔を青くする。
「待て!あそこには、確か…確か…奴を捕縛と同時に押収した、あの未使用の武器____いや、兵器が…」
辺りが突然、カッと明るくなり、直後、大きな爆発音が響く。警官達はその爆風に吹き飛ばされる。鯨波の未使用の武器、それは連射型
鯨「バッ…トウサイ…バットウサイイイッ!!!」
次々に弾を打ち放つ鯨波を止めようと警官達は発砲するも、虚しい抵抗であり、発射された弾は建物を破壊していく。窓ガラスが割れ、屋根は吹き飛び、警官達が悲鳴を上げるも、鯨波の耳には届かず、ただただ、剣心への恨みを強めていくのみである。
鯨「バットウサイ!バットウサイイーッ!!!」
鯨波の脳裏には幕末、抜刀斎もとい、剣心に腕を切り落とさてた事が繰り返される。警察署は轟々と燃え盛る中、鯨波はそこに背を向けて、歩き始める。
「大丈夫か?新市」
新「ああ、なんとか…!アイツ…あの方角…!あの化物、街へ…あんなのが街に入ったら大変な事に!!!」
鯨波が歩んでいく方には弥彦や燕を含め、多くの人がいるのは明白。新市は焦りを募らせる。
その頃、それを知らない燕は弥彦が頭を撫でてくれた様子が、事件前の剣心に重なり、小さく笑う。
弥「よし。もう大丈夫だな…なんだよ」
燕「弥彦君、なんか、また一つ大きくなったね」
嬉しそうに言う燕に弥彦は拳骨をし、ドスドスと先を行ってしまい、燕は涙目になる。
燕「ひーん」
弥「勝手に泣いてろ!」
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作者名：つっさん | 作成日時：2021年2月24日 16時
