373話 ページ36
オ「「白梅香」は一番懐かしく好きな香りなんだが、君のお気に召さないか…白梅香には心を落ち着かせる
オイボレは剣心の近くに白梅香の入った小瓶を置く。辺りは白梅香の優しい香りに包まれる。
同刻、赤べこの仮店舗では妙が燕に買い物を頼もうと近づく。
妙「燕ちゃん。ちょっと買い出し頼まれてえな」
燕「あ…はい。何でしょう……」
Aの死後から、虚ろな様子で暗い燕に妙は心配し、休むように提案する。
妙「………やっぱり、も少し休んだ方がええみたいね」
燕「い…いいえ、大丈夫です。妙さんだって、頑張ってるのに、私だけいつまでも」
弥「なんだなんだ、随分と辛気臭ェ。せっかく、再開しても、これじゃ客も寄りつかねェぞ」
弥彦は赤べこに入るなりそう言う。
妙「弥彦君」
弥「悪い、妙。ちょいと燕、借りてっていーか」
燕「え…でも、今、仕事中____…」
妙「ええよ、いってらっしゃい。丁度、買い出し、頼もうとしてたところやし。夕方までに帰ってくればええさかい」
妙にそう言われ、弥彦は燕を街に連れ出す。だからといって、燕の顔は晴れず、弥彦はAのコトを話すべきだと思うも、蒼紫から奪還するまで他言無用とも言われていた。しかし、暗く沈む燕の顔を見たくはなかった。
燕「怪我の方は大丈夫?出歩いてていいの?」
弥「ん、まあ、あんまし大丈夫じゃねェけど、ジッとしててもしょうがねェしな」
燕「弥彦君は強いね…あんなコトがあっても、ちゃんと立ち直って、元気になって。約束…したのに…必ず生きて、みんな、又会えるって、信じてたのに。こんな…こんなコトになるなんて…」
次第に涙を流す燕に弥彦はくしゃっと燕の頭を撫でる。通りに行き交う人々はそれを横目で眺めていた。
弥「大丈夫だ。約束は必ず守る。俺の話を聞けば、お前もすぐに元気になれる。必ず生きて、みんな、又会える。だがら、もう、泣くんじゃねェよ…」
この時、弥彦が少し背伸びをして燕の頭を撫でた事に燕は気づいてはおらず、ただ、弥彦の言葉に燕は顔を明るくする。その頃、警察署の牢の前で、警官達は茶を呑気に飲んでいた。
「署長、出張ったって?」
「ああ。本庁から出向している。ホラ、あの」
「ああ、藤田警部補」
「そうその藤田警部補が、重要捜査の手掛かりを見つけたとかで朝一番で現場に急行したとさ」
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作者名：つっさん | 作成日時：2021年2月24日 16時
