もう一人の人斬り捌 (ページ3)

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340話ページ3

『かつて瀬戸内を中心に日本近海に居た海賊がもたらしたものなのか…?』
薫「え…?」
『室町の頃の書物には、明国から「倭寇」と呼ばれた海賊達がいた。明国の軍は接近戦でかなり手こずったと書かれていたが…まさか…!』
Aの予想はそのまさかであった。少林武僧出身の武将程宗猷(ていそうゆう)はこの刀と剣術に着目し、研究を重ね、それを「単刀法選」という本にまとめ、軍に広めた。また別の武将戚継光(せきけいこう)は、いち早く日本刀を自分の隊に装備を採用。やがて明の末期には、日本刀は軍隊の正式装備となり、輸入だけでなく、大陸で独自に日本刀式の刀が生産されるに至った。それを「倭刀」と呼び、それを操る大陸式新剣術を「倭刀術」と呼んだ。
恵「倭刀…」
薫「…術」
剣心は先程の攻撃で、壁に打ち付けられ、体が痺れていた。
剣「日本刀の速さと斬れ味に、大陸特有のしなやかな動きと力技を融合させた剣術か…」
縁「嘲笑(フフ)、そんな単純なだけのモノじゃないサ」
斎「だろうな。その程度の「力」では一組織の頂点に立つにはちと足りない」
左「にしても!あの若白髪、どうやってあんな剣術、会得しやがった」
『………マズいな』
左之助や薫は動揺している一方、斎藤とAは至って冷静のように思えた。しかし、Aは縁の様子を見ていると、かつての自分に重なる部分があり、それが"恐怖"となって襲っていた。
縁「さあて、小手調べはこれでお終い。そろそろ、飛天の剣で来たらどうだ?」
剣「その前に、やはり、その黒メガネ、外すでござるよ。一歩間違えば、失明につながる」
縁「ソレは俺を過小評価してるのカ?それとも、自分を過大評価しているのカ?」
縁は笑っている様な顔をしていたが、目には怒りが込み上げていた。
剣「どちらでもござらん。ただ拙者は、お前を傷つけるためではなく、止めるために闘うのでござる」
縁はどこか呆れた様子で太刀を肩に担ぐ。
縁「火付きが悪いだけでなく、付いたら付いたで、今度は炎になるまで随分とかかる様だな。仕方ない。ならば貴様が本気になるまで、こっちもせいぜいお喋り(・・・)でも交えて、気を紛らわすカいくぞ!!」
縁は一気に剣心詰め寄り、攻撃をしながら昔語りを始める。
縁「昔々在る処に______人斬りに姉を殺された少年が居ました。独りぼっちになった哀れな少年は、日本を嫌い、大陸は上海に渡りました」