もう一人の人斬り捌 (ページ14)

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351話ページ14

翌朝、落人群では、左之助が襲ってきたであろう群人を全員のばした上で、剣心に近づく。
「が……は」
「っ…強ぇ……」
「げほっ」
左之助は剣心の前に立つと、何も言わずに殴り、一言だけ言って、その場を立ち去る。
左「あばよ」
その目は怒りとも、絶望とも、失望とも取れる暗いものであった。剣心は引き止めはせず、元の座っていたところへ、ゆらりと戻る。
一方、弥彦と操もまた、落人群に向かっていた。
弥「なんか、目ェ赤いぞ。寝不足か?」
操「んー、まあ、そんなトコ。気にしない、気にしない」
弥「蒼紫は?」
操「んー、なんか緋村に会う前に用があるからって」
弥「じゃあ先に、左之助に声かけるべきだったな。一人で、お前の面倒見るのは、骨が折れるし」
操「何ォー」
弥「あれ」
前方から左之助が来ることに弥彦が気づき、駆け寄る。
弥「左之助!なんだ、お前も来てたのか。丁度いい。これからもう一度剣心に…」
左「よしな。帰んな。そんで、もう二度と来るんじゃねェ。生きてるくせに、死んじまった野郎の相手じゃ、会った所で時間の無駄だ」
弥「左之助…!?」
左「破落戸長屋の俺の部屋はそのままにして行く。全部くれてやるから、早く移りな。神谷道場(おわっちまったところ)にいつまでもいたら、お前もダメになるぜ。じゃあな」
弥彦は一瞬、絶望する。A、薫、剣心に次いで、左之助までもが、神谷道場を去り、すでに手遅れであり、終わりかと思うも、そうでないと、弥彦は背中の竹刀を抜き、振り返らない左之助を呼ぶ。
弥「左之助ェ!!まだ終わりなんかじゃねェ…いや!!俺が絶対に、このままでは終わらせねェ!!だから、どこに行くのか、知らねェが、必ず、必ず見届けに戻って来い!!」
そう伝えるも左之助は振り返らず、弥彦は呼吸を荒くする。その様子を見ていた見届けに操は剣心とAが見込んだだけの気丈さを持っていると確信し、気張ったカラ元気振りまく必要(コト)もないと思うのであった。
操「とにかくサ、今は緋村に会おう!本当の手遅れにならないうちに」
その頃、蒼紫は恵のもとを訪れていた。
恵「日記帳…そう。あのコ、そんなコト頼んでいたの。でも、もう手遅れ…何もかも、遅過ぎたのよ」
蒼「手遅れかどうかは後で判断する。隠密の本質は徹底的な現実主義____…まずは、その時の一部始終を出来る限り、詳しく話せ」

その頃、一人の男もまた、ええじゃないかを歌いながら落人群に向かっていた。