350話 ページ13
誰も、その後は言葉一つ、口に出来ず、その日はめいめいばらばらに家路に別れた。
弥彦は初めて剣心と薫と出会った橋の上にいた。冬のおわりの寒い日。その日から剣心がいて、薫がいて、自分の夢も始まった。けれど、もう、それが…そんな思いで涙を流していると、橋の反対側から足音が聞こえ、背を向ける。
操「弥彦?やっぱり弥彦じゃない。アンタ、こんなトコで何してんのよ。どうしたの。何かあったの!?」
そこには、操と蒼紫が居たのだ。
破落戸長屋に戻った左之助は、剣心の様子に対して苛立ちを募らせていた。
神谷道場に戻った弥彦はAの部屋に通す。
操「………嘘」
弥「嘘じゃねェよ。それがAだ。もう全部、手遅れなだよ。Aは殺された。薫も、剣心も壊れちまった…結局、俺は、何も出来なかった…」
懺悔する様に弥彦は操に言う。操は持っていた袋の紐を握ると弥彦の頭を盛大に叩いた。
操「泣き言なんか、聞きたくないね!女々しいったらありゃしない!」
弥「てめェ!」
操「弱音を吐くなら、後にしろ!あんたには今、やるコトがあるでしょうが!」
そう言って操が出したのは一冊の本であった。
操「Aさんが、私に持ってくる様、頼んだ物。緋村の死んだ奥さんの、本当の気持ちが書き残された日記帳…白髪頭に目ン玉、おっ開げてコレ見せて、自分の救いようのないバカっぷりと、やったコトの無意味っぷりを叩きつけて、Aさんの墓前で地面に顔をめり込むぐらいに土下座させて謝らせてやるのよ!本当ならブッ殺して、首を供えたいところだけど、それは彼女が望まいし、緋村の不殺にも反する。けどせめて、それぐらいしないと、Aさんだって、絶対浮かばない。そして、これは緋村とAさんが見込んだあんたの役目!!私も手伝うから、まずは白髪頭を探し_____何?」
操は真っ直ぐに見つめる弥彦の視線に気がつく。
弥「いや…お前は、本当に、どんな時でも威勢がいいなと思ってよ」
操「ま、元気が、あたしの最大の取り柄だからねー♡」
弥「つうか、元気だけが取り柄だもんな」
操「何ォ!」
弥「とにかく、お前の言う通りだ!奴をこのまま、放っておいて、済ませていいはずがねェ!!よし、明日朝一で、剣心のところ行って、左之助達とみんなで白髪頭の捜索だ!」
その後、蒼紫は用意された部屋で座禅を組んでいると、かすかに泣く声が聞こえた。
操「…一緒に遊ぼうって言ったのに…待ってるって言ったのに…Aさん………」
操は声を殺しながら、涙を流していた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 59人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：つっさん | 作成日時：2021年2月24日 16時
