もう一人の人斬り玖 (ページ48)

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434話ページ48

剣「もう人が「殺す」のも「殺される」のも御免だ。いかなる者であろうと拙者は、この手が届く限り、誰一人たりとて、死なせはしない!もう終わりにするんだ、縁…このまま続けば、やがてお前は、巴の笑顔を永遠に失ってしまう………Aを、守ってくれて…ありがとうでござる………」
剣心が縁の手をそっと離すと、縁は膝から崩れ、涙を流す。
縁「違う!!俺が守りたかったのは…本当に守りたかったのは______…………ちくしょう!ちくしょう………」
剣心は納刀しながら、Aの方へ戻ってくる。
剣「どうしてそう、無茶を…」
『ごめん。ついとっさに体が動いちゃって…って』
剣「おろ?」
力が抜けて倒れそうになる剣心をAはそっと抱き止める。その後到着した警官らによって、縁は拘束され、Aは操に声をかける。
『操』
操「ん?」
『頼んだあれ、今ある?いい?剣心』
剣「ああ…その方がいい…」
『待って。これ、あなたが持っていたほうがいい』
縁「これは…」
『君のお姉さんの手記だよ』
縁「…そうか…」
それが雪代縁を見た最後の姿となった。東京湾に着く頃、雪代縁は巴の日記と共に船から姿を消していた…
一方、剣心とAは、帰りの船に乗り込んだ一行とは船上では別行動をし、人気のない場所にいた。剣心はAの手をそっと包み込みながら、意を決したように視線を絡め、口を開く。
剣「A、俺と一緒になってくれるか?」
『ええ。って、今更言わせないでよ。言ったでしょ。カタが付いたら一緒になるって』
剣「……そうだったな…よかった」
剣心はどこか情けなく気の緩んだ顔をすると、運悪くその場に二人を探していた弥彦が来る。
弥「剣心!A!どこだよ…って、悪ィ。そうだよな。邪魔したな」
剣「あっ…!弥彦、これは、その…違うでござる!!待つでござるよ!!!」
『ふふ…』
先ほどまでの二人の空間は、意図せず仲間との大事な空間へと変化していたことにAは笑みをこぼしながら、剣心が必死に弥彦を追いかける姿を見つめる。
弥彦は自然と他の一行が居る甲板へ向かい、剣心も後を追いかけていたことで結果として、一同がそろう形となった。しかし、弥彦は剣心と目を一向に合わせない様子であった。
弥「俺らのことは気にしなくていいから」
剣「だから、違うと言ってるではござらんか」
『何に勘違いしたかは大方想像できてるけど、違うからね、弥彦』
弥「Aよ…剣心の肩を持つ必要はないと思うぞ…」
『そんなつもりはないよ』