もう一人の人斬り玖 (ページ46)

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432話ページ46

『危ないなぁ…』
剣「…無駄と言ったはずだ、縁。どんなに猛ろうと、お前の攻撃は、もう、拙者には当たらない…」
縁「それが、何だ!何がどうなろうと、俺はただ攻め有るのみ。守りなど無い!守る必要なども無い!!俺が唯一守りたかったものは、既に貴様に…貴様に奪い取られている!!!」
縁の復讐の原点とも思える思いは、剣心の意識をハッとさせる。Aはその思いが痛いほどにわかるが故に強く目を閉じてから、何かを決意した目へと変わるが、それは誰にも知られることはなかった。
縁「だから!殺す!!貴様は、俺の手で、必ず殺す!!」
縁は虎伏絶刀勢の構えをし、剣心は一度目を閉じてから目をゆっくりと開ける。
剣「_______……そうだな…拙者は確かに奪い取った…もう返すことも出来ないが…せめてその怒りには正面から応えなくてはな…」
剣心はそう言うと、外していた鞘を再度帯刀し、天翔龍閃を構える。
操「でも、天翔龍閃って、虎伏なんたらってのに、前、敗れたんじゃないの…?」
蒼「どうかな…前の時は、天翔龍閃は一度見られた後だったのに対して、虎伏絶刀勢は初見と聞いている。だが、今は互い手の内を既に知っている…」
斎「状況より今は、足場の違いの方が大きいがな。この砂浜で、今の奴に、天翔龍閃の要たる左足の踏み込みが十分に効かせられるか、どうか」
左「いいから、黙って見てようぜ。もう、賽の壺の中だ。手の内がどうのこうなんて時は、とっくに過ぎてんだ」
弥「どんな目が出るか。今、出来るのは信じて見守ることだけ…」
炎天下の下、両者は再び対峙する。縁はスッと目を閉じると巴は笑ってはおらず、目を開ける。
縁「抜刀斎、貴様、先程姉さんが微笑ったとぬかしたが…今はどうだ?微笑っているのか……………?」
縁に言われるがまま、剣心も目を閉じるが、何も見えなかった。
剣「いや…微笑う、微笑わないの前に、拙者には、もう見えていない…」
縁「何」
剣「あの一度きりの笑顔が最後…あれ以来、影も見えない………声も聞こえない…けれど、それでいい…一度きりで十分…それだけで拙者は、今一番大切な人と、仲間と、目に映る全ての人々の笑顔を求めて、前より力強く、新たな一歩を踏み出せるのでござる」
剣心の目には揺るぎないものであった。
縁「貴様の戯言など、どうでもいい。姉さんが今、微笑っていないなら、姉さんの笑顔は誰のものでもない。俺は貴様に死罰を下して、もう一度、姉さんの笑顔を取り戻す!!」