もう一人の人斬り玖 (ページ36)

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422話ページ36

弥「さあ、もう一度自慢の棍で打って来い!今度こそ、神谷活心流奥義で返してやる!」
玄「馬鹿が。ヌシの奥義など、我の棍の前では、既に無効だろうが」
弥「馬鹿はてめーだ。奥義はそうあた易く破られねェから奥義ってんだよ!」
玄武はこれをハッタリと見てしまう。奥義は既に二度封じ、その上、頭部と腹部に一打ずつ痛打を入れている。さらに、弥彦が小僧だと思い込んでいる。しかし、それが大きな誤りであったのだ。
玄「よかろう。ならば、望み通り。ただし、これで最後‼︎」
弥「上等だ、来い!」
玄武が棍を大きく振り上げ、弥彦も構える。
玄「噴ッ‼︎」
弥「おおおおお‼︎」
お互いに、狙いを定める。玄武は同じ攻撃であると同じと思い同じように振り下ろすが、弥彦は振り下ろされた棍の先を竹刀の柄頭で押さえつける。この動きに玄武は驚く。
玄「何ッ⁉︎」
弥「ここで…棍の先っぽを押さえちまえば…‼︎」
恵「手ではさんでない…」
剣「いや。先端の一点による微妙な力の均衡。あれで、正解でござるよ。ああなっては、一旦退いて、点をずらさねば、棍の分割は不可能。だが迂闊に退こうとすれば、その瞬間に「刃渡り」が入るし、力まかせに押し切ろうとすれば、弥彦を自ら点をずらして、これもまた「刃渡り」が入る。「刃渡り」の要は、相手の攻撃を封じつつ「刃渡り」に繋げられる状態をつくりだすコト。弥彦はその要をしっかりと理解し、基本の型のみにとらわれず、この状況に合わせて応用を効かし、見事「奥義」を使いこなした。本当に、闘う度に、強く強く成長する…そして__」
剣心は誇らしげに弥彦をみる。そして棍の連結部にはヒビが入り始める。
弥「ヘタに機巧仕込んでいる分、普通の棍より強度が脆くて当然だよな…さあ次はどう出る?押すか退くか?ぐずぐずしてたら、このまま武器破壊だぜ。五、四、三、二、一、零。時間切れ。てめェの負けだ‼︎」
呉「何故だ⁉︎何故、四神が!あまつさえ、あんなガキにすら、何故勝てない??」
剣「まだ、わからぬか……闘いの様相は身体の在り方だけでなく、精神の在り方によっても、大きく左右される。あの四人は拙者に力を貸す形で今、闘っているが、心の深層においては、常に己の抱く最強の想いを以て、自分の闘いを繰り広げている。正義、信念、生き様、未来。いくら神獣の名を頂こうと、所詮は己の愉悦のためだけに闘う者達にこの四人が負けるはずもない。もう一度、言う。ここにいるのは皆、拙者が心から信をおいている、仲間でござる」