もう一人の人斬り (ページ7)

今日:53 hit、昨日:13 hit、合計:170,076 hit

7話ページ7

恵「真逆とは思ったわ。だって、最後にあったの十年以上前よ。突然連絡が途絶えたから、心配してたのよ」
Aはまた心配させちゃったと変わらないなという思いが巡る。
『色々あってね…連絡できなかった。ごめんね』
恵「貴方、親は『死んだよ。いや…殺されたといったほうが正しいか』…っ!ごめんなさい。無神経なこと聞いちゃって」
『良いよ。連絡できなかった理由の一つでもあるし…煙管…吸っていい?嫌だったら辞めるから』
恵は頷き、煙管を蒸し始めると恵は目線を下のままで少しずつ今までのことを話してくれた。
会津で親兄妹と離れ離れになった事、武田観柳という男の元で阿片の密売に加担した事、裏に御庭番衆がいた事、剣心達に助けられた事、今はここのかかりつけの診療所で医師をしている事…

『そっか。俺が来るまでに一人で抱え込んでたんだな…もう大丈夫。助けてくれる人達が居るんだ。自分を責めすぎるなよ』
恵「ありがとう。それと、これ、傷薬。昔から傷が絶えないから、渡しておくわ」
そう言って、巾着袋の中から小さな容器に入った薬を渡した。Aが吸い殻を捨て、懐に煙管と薬をしまうと恵は昔のような調子で話す。
恵「何時まで男だって偽るつもりなの?真逆とは思うけど、いつまでも言わない訳?!」
『剣心はとうの昔に女だって知ってるけど、他はいつ言うかね。まぁ、暫くは言わないつもりだけど』
恵「はぁ～、呆れた。そういうところを直しなさいって言われてたのに…今の姿、おばさんに見せたら…『確実に大目玉食らうな』わかってるなら、直しなさいよ」
『自分の中でケリがつくまではこのままでいようと思うんだ』
恵「そう。Aちゃんのさっきの言葉、そのまま返すわ。私は診療所の方に戻るから、何かあったら呼んで」
『あいよ。気を付けてな』
Aは相変わらず、ズケズケ言ってくるなと思いつつも、弥彦の様子を見に行こうと向かう。Aからすれば、隠してもバレるときにはバレるからそれでもいいかなと思いがあった。一方、恵はどこか嬉しそうに頬を緩める。Aの優しさも変わってないことに安心するも、疑問に感じることが多い。剣心に聞いてもいいのかと思うも流石にまずい。本人が話すまで待つことにしましょうか…と思いながら道場を後にしたのであった。Aは恵に相当心配させた事と高荷家唯一の生き残りだったと言う事が何よりの驚きであった。近い存在だけど、恵は気が強いからな～とAは呑気であった。