50話 ページ50
相楽左之助(十九)。万延元年、信州の農家の長男に生まれる。九歳の時、家出同然で「赤報隊」に入隊。隊長・相楽総三を師と仰ぎ慕うが、やがてニセ官軍の汚名を着せられ、総三は斬首、赤報隊は崩壊する。その後、上京。「斬左」と呼ばれる喧嘩屋となり、喧嘩三昧の荒れた日々を送り名を馳せるが、流浪人・緋村剣心との激闘に敗北。以後、神谷道場に出入りする様になり、現在は悠々自適なプータロー生活中である。
左「錦絵?」
左之助はその日、舎弟と共に赤べこにいると、店主の妙から頼まれ事をされる。
妙「ええ。今日は絵草紙屋に新しいのが入るんですけど、それって、人気絵師のヤツやさかい、すぐ売り切れになってしまうんです。けど、うち、どうしても仕事抜けられへんよって…」
左「で、代わりに俺に買いに行って欲しいと」
妙「ええ。お願いできませんか?」
左「んなモン、わざわざ俺に頼まなくても、弥彦にでも___」
弥「俺だって仕事中だ、バーロー!!」
弥彦は怒り心頭の様子で床のゴミを履く手を止めて、文句を垂らす。居ることに気がついていなかった左之助はいたのかいと小声で漏らす。
弥「ったく。これだからプータローはよーっ!!」
弥彦は不機嫌そうに足音を立てながらその場を離れる。左之助は席を立って、それを引き受ける。
左「まあ、しょっちゅうおごってもらっている事だしな。いいぜ、パシリぐれーはしてやるよ」
妙「今までの全部ツケですよ。おごりじゃありません」
左「細かいこたぁ、気にすんねェ。どーせ払うアテもねェ。で、何て絵師のどんな絵が欲しいんでェ?」
妙「月岡津南作、「剣客・伊庭八郎」!」
左「ホー。幕末一の人気美剣士"隻腕の
妙「うふふ」
左之助が妙を茶化すと、近くにいた燕がなにか言いたげに側による。
燕「あ…あの」
左「あん?」
燕「…………いえ…何でもないです」
燕はオドオドとした様子で何も言えなくなってしまう。そんな様子を見て、左之助は店の出入り口の方へ向かう前に燕に伝える。
左「言いたい事はハッキリ言った方がいいぜ。なあ、小さい嬢ちゃん」
燕「……いえ」
左「そうかい。そんじゃ、月岡津南の
左之助はそのまま店を出ていく。燕は驚いた顔をし、舎弟はその様子を感心していた。
「さすが左之さん、男が違うねェ」
妙「ホント。これで、支払いさえ、ちゃんとしてくれればねェ」
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作者名：つっさん | 作成日時：2019年10月1日 9時
