46話 ページ46
しかし、左腕のみだと抜刀術が使えず、攻撃は厳しかった。Aはただ見守っていた。今は手を出す機会では無いと判断したからだ。しかし、左足に攻撃が当たってしまった。雷十太は喜々とする。
石「勝負あったな。いくら貴様が速くても足がやられては自在に動けまい」
『この程度で喜ぶなよ。アホらしい』
石「ほざけ。いきがろうがこれだけの距離では貴様は反撃は出来ん。吾輩の様に飛飯綱でも使えば話は別だがな」
剣「飛飯綱か…拙者には無理だな」
雷十太は勝機を見出し、渾身の一撃を放つ。
石「この勝負、間合いを制した吾輩の勝利だ!!死ね!!」
剣「だが、間合いの外からの攻撃ならば拙者も可能ッ!!飛天御剣流抜刀術!! 飛竜閃!!」
左・石・弥「な!」
鞘からの抜刀術であった。雷十太から放たれた飛飯綱が剣心の結紐をかすった一方で、剣心の攻撃は雷十太の眉間に逆刃刀の柄頭が当たり、その勢いで吹き飛ばされた。
石「がっ!!」
弥彦は嬉しそうに剣心に近づくと雷十太は弥彦の足を掴み、刀を向けた。
石「ぬおおお」
頭から血を流している雷十太は荒い呼吸をしながら刃を弥彦に向ける。
石「う…動くな!動けばこのガキを殺す!!」
Aは岩から降り、また表情の読めない笑顔で雷十太に近付いた。剣心は刀を抜かずに近付くAを止めなかった。雷十太は声を荒げる。
石「このガキを殺すと言ってるんだぞ!ち…近付くな!」
弥「殺ってみろよ」
『弥彦、大丈夫ですか?まあ、その様子だと問題なさそうですね。自分で解決します?俺が助太刀しましょうか?』
石「!」
弥「いや、一人でやる」
『そうですか』
Aは残念そうな顔をして、雷十太から少し距離を置いた。
弥「殺れるもんなら殺ってみろ!!俺は死んだっててめえなんざに屈しネェ!!」
石「……」
左「本人が殺れって言ってんだ。殺ってみろよ。真古流は殺人剣なんだろ」
Aは再び雷十太に近づき、しゃがむと顔を覗き込むように見る。
『殺人剣と言うのは奪った命の重みによって奈落に落ちる剣の事だってわかりますか?それがわからないなら君は剣客として弥彦には負けちゃいますね』
雷十太は弥彦を解放すると頭を抱え込み、苦しそうな叫び声を上げる。
石「う…うぐううう!」
左「どーする?仕置で腕の一本でもひねっておくか」
『必要無いよ。既に自信が粉砕してるんだ。それに、由太郎の右腕は元には戻らないからな…』
Aはそれまで見せていた表情とは一変して、悲しげな表情をしていた。
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作者名：つっさん | 作成日時：2019年10月1日 9時
