43話 ページ43
Aが由太郎を剣心に預け、何も言わずに雷十太に近づくと雷十太の顔は引きつる。
石「西田…貴様、何故男として生きる?」
『君には必要の無いことだ。まぁ、強いて言うなら戦乱を生き抜いた者だから。それだけだ』
そう言ってAは雷十太を睨むと雷十太は視線を反らしてから剣心を呼びかける。
石「……今は貴様を斃す事が先決である。いざ!」
剣心は由太郎を抱きかかえ、その場をあとにしようとする。雷十太は驚くが、Aの冷たい目で笑っていた。
剣「一刻程そこで待ってろ。貴様には生き地獄を味わせてやる」
『死にてぇなら止めないけど、剣心を怒らせると……どうなるか想像つくだろ?そこまでの阿呆じゃあるまいし』
石「……ぬう…これで三度目。また仕切り直しとは…」
『まだ気づかないんだ。わざわざ手を引くように仕向けてやったのに…』
Aはわざとらしくため息をつき、左之助はAに付け加えるように言う。
左「おめえはこの世で一番恐ろしい男の逆鱗にとうとう触れちまったんだぜ」
一方その頃、小国診療所では剣心と由太郎が治療を受けていた。処置室から恵が出てくると薫は落ち着かない様子であった。
薫「恵さん!どう?由太君は」
恵「一体何で斬られたのよ、あのコ。見事な程、パックリ傷が開いてる割には出血が妙に少ないなんて、こんなの初めてだわ」
薫「そんなの私にだってわかんないわよ。それより由太君は…」
恵「応急処置が早かったから命の別状はないわ。ただ___」
薫「ただ…?」
恵の代わりに小国先生が状況を説明した。
小「神経と筋がバッサリ切断されてしまって、もはや治しようがない。可哀想じゃがあのコはうも二度と剣術は出来んじゃろうて。幸か不幸か、剣心君の右腕をかすったお陰で威力が削がれて切断まではいかなかったが、あの少年はもう二度と剣術はできん…」
薫と弥彦は絶望した顔をし、剣心は少し俯いていた。
薫「……そんな…」
弥「冗談じゃねェぞ!!あいつは剣術に懸けているんだ!才能もあるんだ!それなのになんでそーなるんだよ!!あんた医者だろ!だったらなんとかしろよオイ!!」
弥彦の悲痛な声に小国先生は弥彦に諭すかのように落ち着いた声で言う。
小「無理なものは無理なんじゃ…」
恵「ごめんなさい、弥彦君。残念だけど医者だって万能じゃないの…」
弥彦はもどかしさを噛み締めて、診療所を出ていってしまった。
恵「弥彦君!」
薫「弥彦…」
直後、剣心が立ち上がると小国先生は心配そうに見る。
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作者名：つっさん | 作成日時：2019年10月1日 9時
