もう一人の人斬り (ページ39)

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39話ページ39

左「ったく、おめーらは俺が居合わせない時に限って楽しいケンカしやがって」
剣「だから、拙者は楽しくないって」
『もぉちょい強ければ面白かったかもなぁ。でも、流石にここじゃあ危ないだけだから御免だな』
由太郎は今の一戦を見て、かつて弥彦が言っていた事を思い出し、剣心とAが本当に強いという事を思い知らされたのだった。

それから十日程経った、ある日。Aは朝から出版社に出向き、剣心は買い出しに行っていた。
Aは出版社からの帰り道に剣心と左之助に会い、道場に帰っていた。剣心が道場の戸口を開けると弥彦の怒鳴り声が聞こえる。
弥「誰がチビ猿だ、この猫目野郎!」
左・剣「『っと/おろ/ありゃ』」
言い争いの内容は以下の様だった。弥彦としては、由太郎は門下生では無いのに毎日稽古に来るのはおかしいというのに対して、由太郎は先生と緋村が対決するのに備えて探りを入れているからであって、稽古に来てるのではない、との事。薫は呆れ顔である。
薫「ったくもおー、この子たちは!はいはい!!喧嘩はそこまで!!さあさあ、二人とも稽古稽古!あ、弥彦。ちょっと」
弥「あん?」
薫「今日は由太君、飛び込み面の稽古だから、ちょっと打たれ役になって頂戴」
弥彦が怒り出すも、薫は至って冷静に話す。
弥「バーロー、なんでオレが!!」
薫「私じゃ身長差がありすぎて、いい稽古にならないのよ。ぶちぶち言ってないで早く面つけて。これは師範代の命令よ!」
弥「くっそーーっ!」
弥彦は悔しそうにしながらも面をつけ、由太郎の前に立った。弥彦は由太郎に対して煽りを入れようとしたが、直後驚く事が起きる。
弥「さっさと来な。てめーのヘロヘロ剣を受けてやるんだ。ありがたく…」
由太郎はまるで雰囲気が違い、真剣そのものだった。そして一気に飛び込み面をする由太郎を見て、剣心とAは感心した様子で見る。
由「面ー!!」
剣「ほう!」
『へぇ～』
薫は何気なく剣心とAに聞いてきた。
薫「どう?」
剣「こりゃあ驚いたでござるよ」
『想像以上。素質があるのに勿体無いなぁ』
弥彦もまた驚いていたのだが打ち込まれるのが腹立たしかったよう。
弥「やっぱり、てめーに打ち込まれるのはムショーに腹が立つ!!!」
由「なんだぁ、やるのか!!」
薫「いー加減にしろ!!!」
剣「おろろ」
そんな様子を見ていた三人は呆れ顔であった。

稽古後、全員で赤べこに食べに行くとAが思い出したようにつぶやく。