32話 ページ32
『そういう商いをしてるから襲ってくる奴等がいた、と』
由父「そうですね。三ヶ月程前、馬車ごと凶賊に襲われたんですよ。そこに丁度通りかかった先生に救われました。以来由太郎を鍛えるため、剣術の先生としてウチに滞在して頂いてるんです。男はいついかなる時でも強くなくてはいけない、そうでしょう?」
剣心もAもそれに対して何も言わなかった。池にかかっている橋に雷十太がいた。
由父「先生。では、ごゆっくりと…」
由左衛門がその場をあとにするとAが冷徹無慈悲な目で見つめる。
『俺と剣心を呼んで、何のようだ、雷十太』
石「緋村、西田。お主らは今の日本剣術をどう感じておる?惰弱だと感じぬか?貧弱でぜい弱だと感じぬか。いや事実間違いなくあらゆる意味で弱くなっておることは間違いない。そして弱いモノは必ず淘汰される。これは自然の摂理である。そこでだ。緋村、西田。お主らに我が「真古流」の一員になってこれから始まる日本剣術再興の大業に力を貸してもらいたい」
『剣心は確かに古流剣術の使い手ではあるが、何故俺を一員にしたい?』
そう聞かれた雷十太はAの手に目を向ける。
石「その手に持っているのは真剣であろう?さらに、吾輩の秘剣「飯綱」を見破ったのが理由である」
『あれか…まぁ、此れは真剣であるが君の力になる為に振るう気は無いな』
Aが冷たく言い放つと雷十太は食い下がる。
石「吾輩と数名の同士にお主らが加われば、今ある剣術、五百余派を根こそぎ根絶出来るはず」
剣「根絶…?どういうことだ?再興ではないのか」
石「再興である。だが、その前に無能な物を取り除く作業が不可欠」
『成程…竹刀剣術を潰してから古流剣術のみの…「真古流」のみの剣術の再興をしようって言うのか?』
端的にAがまとめると、雷十太は熱の入った言い方で語る。
石「今度は二度と弱体化しない、そう!戦国よりもはるか昔、剣客が「飯綱使い」とも呼ばれる妖術使いの類と思われ、恐れられた程の強さを持っていた頃の剣術。古流剣術を「真古流」に換えて明治の世に再興するのだ!!!資質ある者だけの少数精鋭でよい。目指すは他のどんな武術はもちろん、西洋銃火器にも負けぬ無敵の剣術」
それを聞いて思わず薫は絶句する。
薫「何てコトを」
雷十太は剣心とAさんの返事を聞かずに命令口調で言う。
石「吾輩に力を貸すのだ、緋村、西田」
剣「古流剣術は実戦本位の殺人剣。それをわかってて言ってるのでござるか」
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作者名：つっさん | 作成日時：2019年10月1日 9時
