25話 ページ25
前川は気迫のある声で門下生を静止して、そう宣言する。剣心は何かに気づき、前川を止めようとする。
剣「前川殿」
前「わかってる。あの男、只者ではない。自惚れるだけの力がある。だからこそ闘ってみたくなった」
そう言うと剣心はそれ以上言わなかった。前川は雷十太に向かいあう。
前「老いたとは言え、江戸二十傑に数えられたこの前川宮内。そう易々と負けはせん」
そう言いながら門下生に羽織を渡し、竹刀を受け取ると雷十太は呆れているような素振りを見せる。
石「…竹刀か…話にもならんな」
前「何…?」
そう聞くと入口の方から少年の声が聞こえる。
??「先生!!」
石「由太郎か…遅かったな」
そう言われ、由太郎と呼ばれた少年は息を切らしている。
由「仕方ないですよ。先生と俺じゃ、歩幅が全然違うんですから。これでも全速力で走ってきたんですよ。まぁいいや。それより、手合わせ。真剣と木刀、どっちです?」
石「竹刀だ」
由「へ?」
石「向こうがそう言って来た」
それを聞くと由太郎は口を抑えながらも笑い始めた。
門下生の多くがムッとするのを無視して、由太郎は大声で馬鹿にする。
由「そんな遊び道具で勝負なんて。なんだここも名ばかりの道場かよ!」
その発言が頭にきたのか、弥彦は由太郎を蹴飛ばしながら文句を言う。
弥「うるせえよ。一体何なんだ。おめーは!」
由太郎は弥彦に対してガキだ何だと文句を言っているが、弥彦は冷静に名乗る。
弥「俺は神谷活心流一番門下生、明神弥彦!覚えとけ!」
弥彦の発言に由太郎は張り合うように言う。
由「雷十太先生の一番弟子、塚山由太郎!今の一蹴りは高くつくぜ!」
二人の言い争いに雷十太は静かに静止を促す。
石「うるさい、静かにしてろ。生憎だが吾輩は竹刀などを持っておらん。一振り借りるぞ」
前「構わん。好きなのを選べ。だが、後で竹刀が悪かったなどとほざくなよ」
Aからすれば、前川は忠告のつもりで言っているのだろうが…今の前川では勝ちは難しい…一、一にもつれ込んで最後の一本が向こうがとるか…と剣心も思ったのか、また目配せをする。正直、剣心の思っている以上に厳しいというのがAの見解ではあったかが、二人は前川を取り敢えず見守る事にする。薫もまた、そうは言っても些か危ない気がしていた。
薫「では公平を期すため、他流者の不肖、神谷薫が務めさせて頂きます。一本目!」
薫が言うと前川は気を立てる。
前「うおうぁ!!」
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作者名：つっさん | 作成日時：2019年10月1日 9時
