19話 ページ19
薫がいなくなると突然、部屋が静まり返った。Aは一人になると、やはりさっきの出来事を思い出してしまう。さて、どうしよう…薫には言うと悪いと感じる反面、剣心は至って真剣だし、恵にはそれとなく言ったけど…左之助も…多分気が付いてるかな…?と悶々としながら布団を敷き、うつ伏せになった。考えてもなぁ…と思うと睡魔に襲われ、そのまま眠ってしまう。
翌朝と言っても、日が昇る少し前。空が白んでくる頃目が覚める。Aはてっきり、剣心が起きているものだと思って台所へ向かうと、誰もいなかった。
『さて、作るか…』
竈の火をおこし、米を炊き、味噌汁を作る。その後、おかずを作り始めると、起きてきた薫に食器を出すように指示をする。剣心は体を起こし、衣服を整え部屋を出ると薫に会う。
薫「おはよう!剣心。寝坊なんて珍しいわね」
剣「おはよう、薫殿。恥ずかしい限りでござるよ…寝坊なんて何時ぶりかわからないでござるから」
薫「朝はAさんが作ってくれたの!味見させてくれたんだけど、すごく美味しかったわ!姉が出来たみたい!」
薫は嬉しそうに言う。薫を追いかけるように剣心も向かうと、テキパキと作るAの姿があった。Aは剣心の気配に気が付く。
『おはよう、剣心。もう出来るからそこで待ってて』
端的に言って、薫にあれこれ言いながら準備をしていた。その直後、左之助と弥彦が一緒に来る。
左「おはよう。今日は剣心じゃねぇんだな」
剣「悪かったな…でござる」
左「さてはオメー、昨日あの後、Aと仲良しこよししてたのか?」
不貞腐れている剣心に、左之助は半笑いで耳打ちすると、あからさまに剣心は顔を真っ赤にする。
剣「左之…お主、まだ言うか…だからそういう関係では無いと言ってるではござらんか!」
左「まぁまぁ、そうムキになるなって!わかるやつが見りゃあ冗談だってわかるからよ」
薫「ちょっと、朝から何の話をしてる訳?」
『出来たから食べるぞ。不要だったら言ってくれ。全部、弥彦に食わせるから』
弥「良いのか!やったぜ!」
Aは目が笑っていない状態で口角を上げ、薫は知らぬが仏ってこの事ねと思いながら、それ以上の会話をせずに席に着く。弥彦は気付いておらず、やたら上機嫌であった。
暫くしてから、恵が来て、縁側に座ると思い出したかのような口ぶりでAに言う。
恵「あら、ごめんなさい。食事中だったのね。それとA。貴方、私達に言わないといけないことがあるでしょう?」
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作者名：つっさん | 作成日時：2019年10月1日 9時
