2話 ページ2
維新から十年。
桂さんの護衛を辞めて、旅を始めてから七年。
今日、東京に戻ってきた。
『さて、宿を探すか……ん?』
ふと、懐かしい声が聞こえた気がし、辺りを見渡す。しかし、声の主に姿は見えず、再び歩もうとすると、また声が聞こえた。
『…剣心か?』
剣「やっぱり隼人か。どうしてここに?」
『んー…なんとなく?』
??「おーい、剣心…って、知り合いの方?」
小走りで来た少女は小さく首を傾げた。
剣「薫殿。そうでござるよ。幕末の旧友でござる」
薫「そうだったのね!私は神谷薫。よろしくね」
『西田隼人だ。よろしく、薫』
剣「隼人、宿は決まってるのか?」
『いや、まだ着いたばかりだからこれから。で、その語尾はどういう理由で?』
半笑いする隼人に剣心は別に深いワケでは、と言おうとすると、薫が一つ提案をした。
薫「じゃあ、私の家に来る?すぐ近くだし」
『随分、無用心なお誘いだな。俺の素性を明かしてないのに』
薫「大丈夫よ!剣心の旧友なんでしょ?人が増えても、問題ないわよ」
『え、お前、手ぇ出したの、が!?…っ痛〜!何すんだよ!冗談だって、わかってるだろ!!…ったく、少しは手加減しろよ』
剣心に頭を手刀を入れられ、痛がる隼人の言葉に薫は顔を赤らめながら、まんざらでもない様な様子である。
薫「そ、そんな訳、ないじゃない…!そうじゃなくて、他にも居候がいるっていう事であった…その…」
『ごめん、ごめん。からかいすぎたな』
もじもじと体をくねらせる薫の後ろから、髪の逆立った少年が怒鳴り声を上げる。
??「おい!ブス!何油売ってるんだよ!早く戻らねえと左之助が来ちまうだろうが……って、誰だ、お前?」
薫をブス呼ばわりした少年は隼人を不思議そうに見る。
『少年、女性にブスは良くないだろ〜。なあ、薫』
薫「そ、そうよ!剣術小町って呼ばれている私にブスって何よ!弥彦!」
剣「まあまあ。とりあえず、道場に戻るでござるよ」
剣心はそう言って、二人をなだめる。
『まあ、お言葉に甘えて、しばらく居候させてもらおうかな』
隼人は口にはしなかったが、剣心に対して聞きたいことがあるし、剣心も自分に聞きたいことがあるだろうと予想した上での判断であった。
薫「ほんと!?じゃあ、今晩は私が作ろ…何よ、その顔」
弥「…いや、だってよぉ〜、お前の料理って、食えた試しがないから」
剣「拙者が作るでござるよ」
薫は二人の"作るな"という圧に押され、渋々、了承する一方で、隼人は何を言っているのか、この時はまだ知らなかった。
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作者名：つっさん | 作成日時：2019年10月1日 9時
