第56話 ページ9
｢いらっしゃいませ〜｣
店内に入ると、すぐに聞こえてくる可愛らしい店員さんの声。
その声を聞きながらも、私はすぐにブレスレットが置いてあるところへ向かった。
｢これとかどうかな〜？｣
｢あー、いんじゃない？｣
｢これも似合いそう｣
｢うんうん｣
｢これとか！！｣
｢いいねえ｣
見れば見るほど迷う。
キヨはオシャレだし何でも似合っちゃうんだろうな。
だから余計決められなくて、フジに聞くも、全て良いとしか言わないからこれまた困ったもんだ。
｢フジはどれがいいと思う？｣
｢Aちゃんが選ぶものなら何でもいいと思うよ｣
はい、きた。一番困る答え。
それがわからないから聞いてるんじゃあああ！！
なんて言えずに、そうかな〜？と笑って答えたあと、再びアクセサリーに目を移す。
そして30分後…
｢よし！！これにしよう！！！｣
悩みに悩み抜いて選んだものは、茶色ベースにターコイズのストーンが付いたちょっとジャラジャラ系のもの。
｢うん、キヨっぽい！｣
そう言って笑うフジを見ると、なんだか嬉しくて私も釣られて笑顔になる。
｢んじゃちょっとお会計してくるから、フジそこで座ってて？｣
おっけー、と言いベンチへ向かって歩いて行くフジを見送った後、再びさっきのブレスレット売り場へと戻る。
｢今日のお礼にフジにも何か買っていこう｣
そう思って手に取ったのは、フジがずっと眺めていた黒色のバングル。
試しにこっそり付けているのを目撃したけど、とても似合っていたのでそれを買うことに。
｢お待たせ〜｣
お会計を済ませ、フジの元へ向かうと、お疲れ〜と言って手を振ってくれた。
｢はい、これあげる｣
｢ん？なに？｣
そう言ってさっき買ったばかりの物を渡すと、不思議そうに見つめるフジ。
｢今日のお礼です｣
｢そんな、いいのに別に｣
｢いいから！｣
開けてみて！と言うと、不思議そうな顔で開けるフジ。
中身を見た瞬間、驚きから笑顔に変わる。
｢見ててくれたの？｣
｢すごく似合ってたから｣
ありがとう、と言うとすぐに腕につけ、どう？とドヤ顔で聞いてくる。
｢うん、最高｣
そう真顔で答えると、真顔かーい！とツッコミが入る。
｢大切にするね｣
そう小さな声で言うフジに、ありがとうと笑顔で答えた。
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作者名：白虎 | 作成日時：2016年5月26日 1時
