キヨside ページ6
「あーーー食った食った。帰って実況でも撮るか」
イベント帰りの駅のホーム、少しの間携帯をいじっていると電車がやってきた。満員である。
まじかよ最悪...と思わず声に出しながら携帯をポケットに入れ乗り込むと、車内はサラリーマンでいっぱいであった。
逆側のドアまで押され思わず周りをにらむ。
電車が動き出し再びポケットから携帯を取り出しLINEで明日の予定をメンバーに聞いていると、ふと横から荒い息遣いが聞こえてきた。
体調が悪いのかとも思ったのだがどうやら違う。
暫く様子を見ようと次の駅に着くまで見守る。が、次の駅を過ぎてもそいつの様子は変わらない。
むしろ酷くなって言うようにも思える。
ふとそいつの目線の先を見ると、そこには小柄な美少年が一人。
もしや、と思い手元を見る。明らかに触っていた。
少年は怖くて声が出ないのかじっとドアの外を見ながら立っている。
周りは気づいていないのか、それとも気づいていないふりをしているのか、誰も少年を助けようとしない。
「俺か...」
はぁ、と小さくため息をつき、スッとそいつの腕を掴んだ。
「おい」
低い声の方が効果あると思い、寝起きほどではないが低い声で男に声をかける。
すると少年と男が同時に振り返る。
何やってんのと男に声をかけると顔を真っ青にしながら冷や汗をかき始めた。
ちょうどいいタイミングで次の駅に着くと、男が逃げ出しそうになったため、さらに力を込めて掴む。
「はいはい逃げない逃げない、行くぞ痴漢野郎」
そういうと電車から降りる。
振り向くとさっきの少年が唖然と立ち尽くしていたので一緒に来て、と伝え三人で警察署へ向かった。
いろいろ詳しいことを聞かれたが、少年が不安そうな顔で話せなそうだったため代わりに話した。
数分後警察から解放されると少年と二人で駅に向かった。
ずっと黙ったまま静かに後ろをついてくる少年が気になり、大丈夫かと声をかけたらやたら驚かれた。
心配になり、顔を覗き込みながら本当に大丈夫かと聞くと慌てながら大丈夫ですと頭を下げてお礼も言われた。
思っていたより元気なのかと思い安心し、
「まさか男が男を狙うなんて思わねえよなあ」
と呟くと驚いた顔で、え？と聞かれた。
何に対してのえ？なのかわからず、同じように返すと二人の間に暫くの沈黙。
すると少年は思い出したかのように携帯の画面を見たあと、再び深いお辞儀とお礼を言われ電車に乗り込んでしまった。
呆気に取られつつも変な奴と呟き見送った。
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作者名：白虎 | 作成日時：2016年2月12日 3時
