元柱だった隊員・2【不死川実弥】

93話 ページ43

Aはふらつく体で、悲鳴嶼の元にやって来た。


『悲鳴嶼さん』

「石黒、やったな」

『はい……。
遅くなってしまい、すみません』

「お前が来てくれたお陰で勝てたのも事実。
鬼のいなくなった世の中で、ほんのわずかな時でも、不死川と幸せにな」

『っ、はい』


Aは涙を堪えて、悲鳴嶼の最期を看取った。

その時、隠がAを止めた。


「石黒様！」

「血が流れすぎです！」


Aは隠たちに言われて止まる。

隠たちはその一瞬でAの傷を処置していく。


『ごめんね……』

「我々の願いは、果たされました」


隠の涙ながらの言葉に、Aも微笑む。

それから、甘露寺と伊黒を看取った。

Aは肩を押さえながら、実弥を見ると、微笑んで冨岡たちに目を向ける。

だが、あちら側の様子がおかしいことに気がついた。


『何……』

「離れろ！！！」


冨岡の怒声にAも駆けつけた。


『なにがっ』

「炭治郎が鬼になった！！」

『ぇ……』


Aが炭治郎を見ると、太陽の光に焼ける体を見た。


「動ける者！！
武器を取って集まれ！！」


冨岡の声が響く。

Aも刀を握って炭治郎と向き合った。


「炭治郎が鬼にされた！
太陽の下に固定して焼き殺す！！」


その一言に、善逸や伊之助にも衝撃が走る。


「人を殺す前に炭治郎を殺せ！！」

『動ける人急いで！！早く！！！』


炭治郎が動こうとするのを、冨岡とAで止める。

二人とも、頸を斬るだけ力が残っていない。


『お願い！炭治郎くんが人を殺す前に！！』

(――頼む、このまま。炭治郎のまま、死んでくれ…！)


Aと冨岡が、炭治郎のまま終わりを願う。

だが、皮肉にも、炭治郎は太陽の光を克服した。


『まずいっ』


そう思ってると冨岡が一撃を貰う。


『冨岡！』

「気にするな！」


そう返したものの、失血でめまいがする。

冨岡がどうするか考えていると、伊之助がやって来た。


「半々羽織りだぞ！仲間だぞ！！」

「炭治郎」


続けて善逸も来る。

Aはその二人を見て、首を振った。


――だめだ、この二人に炭治郎の頸を斬らせるわけにはいかない。

――私が、やるしかない。


だが、Aも体の限界を超えている。

貧血から来る吐き気に、Aは立てなかった。


『っ、まずいっ…』


冨岡とA。

二人はずっと策を考えていた。

炭治郎が人を殺す前に、炭治郎を殺す方法を。


世の中は残酷だ。

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